監修者一覧
男性ホルモンや女性ホルモンは、髪の成長・薄毛に関係しているといわれていますが、果たして本当なのか疑問を持っている人は多いのではないでしょうか。
薄毛の原因や髪の成長にはホルモンが密接に関わっているため、薄毛の促進を抑えて健康な髪の成長を目指すには、どのような理由により髪とホルモンが関係しているのかを知っておくことが大切です。
今回は男性ホルモン・女性ホルモンがもたらす髪への影響について紹介します。健康な髪の成長や薄毛に関心のある人は、ぜひチェックしてみてください。
目次
薄毛の原因は男性ホルモンが関係している
(出典:(1)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)
薄毛の原因は、男性ホルモンが強く関係しています。原因となる男性ホルモンは、主に次の2種類です。
テストステロン
テストステロンは、筋肉量を増やす、生殖機能を向上させる働きをする男性ホルモンです。男性ホルモンのおよそ95%がテストステロンによるもので、脱毛や薄毛を促す性質を持っています。
テストステロンが活発であるほど、脱毛や薄毛の原因となります。体毛を濃くして増やす性質がある一方で、髪の脱毛や薄毛を促す性質をも兼ね揃えているのです。
テストステロンの分泌量は、30歳を過ぎたころにピークを迎えて加齢とともに減少していきます。
また頭皮だけでなく骨格を作る、ヒゲや体毛を構成するなどにも影響を与えます。
ジヒドロテストステロン
(出典:(2)男性型脱毛症のフィナステリド治療効果とアンドロゲン受容体遺伝子CAGリピート多型との相関性,(3)毛と毛包の解剖・毛髪異常 (AGA) )
ジヒドロテストステロンは、髪の成長に影響する毛母細胞の働きを低下させ、薄毛の原因となるホルモンです。ジヒドロテストステロンは、テストステロンから構成されます。
テストステロンと頭皮に存在する5αリダクターゼIIという酵素が結合することで、ジヒドロテストステロンへと変化します。そのため薄毛対策は、ジヒドロテストステロンの生成を抑制することが肝心です。
20代で薄毛になる場合は、ジヒドロテストステロンのホルモン分泌が多い可能性があり、AGA ( 男性型脱毛症 ) が疑われます。
なお5αリダクターゼIIは、頭頂部と前髪の生え際に多く分布されているため、側頭部や後頭部の毛は抜けずに残るのが特徴です。
髪の成長を促す女性ホルモンとは?
女性ホルモンには髪の成長を促すものがあります。髪の成長を促す女性ホルモンは、以下の2種類です。
エストロゲン
(出典:(4)エストロゲンの皮膚老化防御における分子機構の解明)
エストロゲンは、ヘアサイクルの周期を保つ、ツヤのある髪の生成するなどの作用がある女性ホルモンです。女性の体を健康に保つ役割を持っており、分泌が活発なほど毛髪や肌の成長が活性化されます。
卵巣から分泌されるホルモンで、出産後や閉経と迎えると減少してしまいます。
生活習慣やストレスによってホルモンバランスが崩れると影響を及ぼすため、エストロゲンの減少を抑えるには、日ごろから規則正しい生活を送ることが大切です。
プロゲステロン
(出典:(5)妊娠と美)
妊娠時に母体と胎児を守る役割を担うプロゲステロンは、毛髪にも影響のある女性ホルモンです。プロゲステロンには、抜け毛や薄毛を抑制する作用があります。
エストロゲンと同様、生活習慣の悪化や出産などホルモンバランスの乱れによって減少するのが特徴です。
女性ホルモンの投与で健康な髪の成長は期待できるのか
男性の場合、女性ホルモンを投与すれば健康な髪の成長が期待できるのではないかと思うかもしれませんが、髪の成長以外の作用が出てしまう可能性があるのでおすすめできません。
女性ホルモンを投与すると、人によっては以下のような影響が出ます。
女性ホルモンの投与は、本来備わっている男性機能が低下するリスクがあるので、一般的に性同一性障害の治療などで行われます。
そのため髪の成長を促す目的で女性ホルモンを投与するのは避けたほうが良いでしょう。
ホルモン投与以外で髪の成長を目指す方法
ホルモン治療以外でも健康な髪の成長を促す方法はあります。
ポイントはホルモンバランスを整えることです。以下6つの対策をすることで、健康な髪の成長が期待できます。
食生活を見直す
(出典:(6)うつ病と栄養,(7)飲酒に伴う栄養素摂取状況と食品群別摂取状況の変動ならびに循環器健診成績の関連について)
食事は髪にさまざまな影響を及ぼします。男性ホルモンが増える牛乳や肉類などを控えめにして、野菜を積極的に摂りましょう。
飲酒は髪に必要な栄養素がアルコール分解に使われてしまうため、健康な髪の成長を目指すのであれば控えめにしたほうが良いです。
睡眠を十分にとる
(出典:(8)睡眠関連ホルモンの計測,(9)第3章 主な医薬品とその作用)
質の良い睡眠によりホルモンバランスが整い、毛髪に良い影響をもたらします。睡眠中は疲労回復を促す成長ホルモンや神経ホルモンであるメラトニンが分泌されて、毛母血管に栄養が届きやすくなるからです。
ホルモンバランスを整えるには、6〜8時間の睡眠時間が最適とされています。しかし睡眠時間が足りていても、寝る時間がバラバラだと副交感神経の活動効率が下がり成長ホルモンが分泌されないので注意が必要です。
ストレスのない生活を心がける
(出典:(10)画像解析によるマウスの体毛成長の評価)
ストレスのない生活を心がけるようにしましょう。ストレスが溜まるとホルモンバランスが崩れて、薄毛の原因になるからです。
またストレスのある生活は、脳内をつかさどる神経伝達物質セロトニンの分泌量が減ってしまい髪へ悪影響を与えます。
さらにコルチゾールというホルモンも分泌されるようになり、毛母細胞の老朽化を進行させる恐れもあります。
適度な運動などにより、普段からストレス解消するように心がけましょう。
喫煙を控える
(出典:(11)喫煙の血行器に及ぼす影響 : 第一報 禁煙後に於ける喫煙の血行器に及ぼす影響)
喫煙は頭皮の血流を悪くしてしまうため、控えるようにしましょう。煙草に含まれるニコチンは、毛母血管を収縮させる作用があるからです。
さらに喫煙により頭皮に酸素が行き届きにくくなるので、毛母細胞の活躍を阻害させてしまいます。
また薄毛の原因となるジヒドロテストステロンは、喫煙でも増加するので健康な髪の成長を目指すのであれば喫煙はあまりおすすめできません。
まずは可能な限り本数を減らしてみましょう。
頭皮のマッサージをする
(出典:(12)地肌マッサージの頭皮への作用)
頭皮マッサージは、血行を促進して毛母血管の働きを助けるので、薄毛対策に効果的です。また頭皮マッサージによって皮脂を落とせるので、毛穴がきれいになるメリットもあります。
頭皮マッサージをする際のポイントは、頭皮を動かすように意識しながら指で揉みほぐすことです。特に入浴後の頭皮が柔らかくなっているときが、良いタイミングとされています。
紫外線対策をする
(出典:(13)毛髪の紫外線ダメージ —評価指標とダメージケア—)
紫外線対策は、髪の成長の改善につながります。紫外線を受け続けることで髪のタンパク質は徐々に失われ、髪表面のキューティクルが剥離されます。結果、しっかりとした髪は失われ、髪のパサつき、枝毛、切れ毛などを引き起こします。
UVカットスプレーを使用する、帽子を着用するなどにより紫外線対策をしましょう。
髪の成長のカギはホルモンバランスとの付き合い方
髪の成長とホルモンは深く関係しているため、ホルモン投与が髪の成長に効果的だと思うかもしれませんが、リスクを伴うのでおすすめできる方法ではありません。
それよりも食事や睡眠といった生活習慣の改善に努め、ホルモンバランスを整えることが大切です。まずはできるところから進めていきましょう。
- 1).男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版
- 2).男性型脱毛症のフィナステリド治療効果とアンドロゲン受容体遺伝子CAGリピート多型との相関性
- 3).毛と毛包の解剖・毛髪異常 (AGA)
- 4).Mark J Messina,Charles E Wood「Soy isoflavones, estrogen therapy, and breast cancer risk: analysis and commentary」
- 5).女性心身医学 J Jp Soc Psychosom Obstet Gynecol Vol. 21, No. 3, pp. 290-294,(2017 年 3 月)
- 6).四国医誌 68巻1,2号 3~8 APRIL25, 2012
- 7).第33巻 日循協誌 第3号
- 8).快眠のための睡眠判定と睡眠モニタシステム
- 9).厚生労働省ホームページ
- 10).川崎医療福祉学会誌 Vol. 28 No. 1 2018 125-133
- 11).喫煙の血行器に及ぼす影響 : 第一報 禁煙後に於ける喫煙の血行器に及ぼす影響
- 12).地肌マッサージの頭皮への作用
- 13).毛髪の紫外線ダメージ —評価指標とダメージケア—