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「髪型は変わらないのに最近前髪がスカスカになってきた」「生え際が目立つようになった」という悩みには、いくつかの原因が考えられます。何が薄毛・脱毛の原因になっているかを知ることは、適切な対策を打つことにもつながるでしょう。
前髪や生え際がスカスカになってしまう原因と対策、前髪の薄さが目立たないおすすめのスタイリング方法などを紹介します。
目次
前髪・生え際がスカスカとはどんな状態のこと?
「前髪がスカスカ」とは具体的にはどんな状態を指すのでしょうか。くわしく見ていきましょう。
前髪からおでこの地肌が透けて見える
前髪を下ろしているときに「以前よりもおでこが透けて見えるようになった」「生え際がはっきりとわかるようになった」と感じる場合は、前髪がスカスカであるといえます。
前髪がしっかりと生えている場合は、おでこや生え際は下ろした前髪に隠れて見えません。しかし前髪がスカスカになっていると、同じスタイリングでもこれらの部分が隠れきれず、地肌が前髪から透けて見えてしまいます。「以前よりも前髪のセットが決まりにくくなった」と感じたら要注意です。
おでこの生え際が後退している
(出典:(1)男性型脱毛症(AGA) 治療の若返り効果)「おでこの生え際が以前よりも頭頂側に移動して、おでこの面積が広くなった」と感じる場合も、前髪がスカスカになっているといえます。
これまで生え際だった場所の髪がなくなり前髪の量が大きく減少する、あるいは前髪がほとんどなくなってしまっている状態です。
前髪が乏しい状態になると、老けた印象を与えてしまうこともあります。
毛質が柔らかく細くなった
「以前よりも毛質が柔らかく細くなっている」「前髪の生え際に産毛が目立つようになった」という場合にも注意が必要です。
たとえ毛量が同じでも、一本一本の毛が細くなると前髪がスカスカになり、生え際が目立つようになります。毛質の変化が判断しにくい場合は、シャンプーやドライヤーの際に落ちる前髪の抜け毛を側頭部や後頭部の毛と比較してみましょう。
明らかに毛量が減っている
「以前よりも毛量が減った」という自覚があるケースも少なくありません。
全体の毛量が減ることで、前髪の薄さも際立って感じられるようになります。全体的にスタイリングが長持ちせずボリューム不足が目立つようになったり、以前と比べて髪のセットがうまくいかなくなったりする場合は、前髪もスカスカになっているかもしれません。
前髪の生え際が後退している状態の基準は?
前髪の生え際が後退している状態の基準は、次の通りです。
M字の額と頭頂部、耳を結んだ線の間が2cm以内
(出典:(2)男性型脱毛症 (AGA) 治療の若返り効果) (出典:(3)Classifications of Patterned Hair Loss: A Review) (出典:(4)薄毛は他者にどのような印象を与えるのか -男性型脱毛症に対する印象形成-)横から頭部を見たとき、頭頂部と耳を結んだ縦のラインと、額のM字のもっとも後退している部分との差が2~3cm以内であれば、前髪の生え際が後退しているサインです。
これは「ハミルトン・ノーウッド分類」と呼ばれる基準による判断方法です。この分類法は男性の薄毛・脱毛パターンを体系的にまとめ、図に当てはめることで、脱毛の進行度合いを客観的にとらえられるよう整理されています。
日本ではこの分類を日本人向けにカスタマイズしたうえで、医療機関における薄毛やAGAの診断時に利用しています。自身の前髪の状態を客観的に判断する際の目安になるでしょう。
なお2cmは1円玉の直径の大きさ、3cmは標準的なレシートを縦半分に折った幅より1mm程度大きいサイズ感です。手元に定規が無い人は参考にしてみてください。
前髪・生え際がスカスカになる原因
前髪や生え際がスカスカになる原因はひとつではありません。次から解説する原因が自分に当てはまっていないかどうかをチェックしてみましょう。
AGA(男性型脱毛症)
(出典:(5)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版)前髪がスカスカになってしまう原因としてまず挙げられるのが、AGA(男性型脱毛症)です。
AGAとは頭髪の薄毛・脱毛が進み、最終的には生えなくなってしまう疾患です。日本人男性の約30%が発症し、年齢とともに発症頻度が高くなるとされています。
AGAを発症すると、毛が生え変わる「毛周期」の成長期が短くなり、休止期のままになる毛包が増加します。また、毛が短く細くなってしまうのもAGAの特徴です。
AGAの原因には男性ホルモンの影響や遺伝的要素があるとされており、治療法や薬に関する研究が国内外で進んでいます。
頭皮の血行不良
(出典:(6)ホソカワミクロンが提唱する内外育毛ケア理論) (出典:(7)生活習慣病における運動療法の役割) (出典:(8)顕微鏡血流観察による有酸素運動前後の毛細血管血流速度の定量) (出典:(9)e-ヘルスネット ニコチン) (出典:(10)涙とストレス緩和) (出典:(11)e-ヘルスネット 快眠のためのテクニック -よく眠るために必要な寝具の条件と寝相・寝返りとの関係)前髪や生え際がスカスカになる症状は、頭皮の血流が悪くなることでも起こる可能性があります。髪の成長に必要な栄養が、毛根まで届きにくくなるからです。
血行不良の原因はさまざまですが、大きな要因のひとつが慢性的な運動不足です。
運動には血流をうながす効果が見込めますが、日常的な運動不足になれば血行の悪化が懸念されます。とくに運動不足から肥満になっているケースでは、血中コレステロール濃度が増加し血液が凝固しやすくなるため、さらなる血流悪化を招く可能性も否定できません。
血行不良の原因はその他にも、血管収縮作用をもつニコチンの過剰摂取や強いストレスが挙げられます。さらに就寝時に硬すぎる寝具を使っている場合にも、圧迫から血流を阻害する可能性があります。身体のS字カーブを保てる適度な硬さの寝具を使用するのが肝要です。
生活習慣
(出典:(12)髪の健康を考える〜美しい髪で過ごすには〜)生活習慣の乱れや不健康な食生活も、薄毛や脱毛との関係性があると指摘されています。睡眠不足、喫煙、偏った栄養状態などは、肉体だけではなく髪の健康も損ねてしまうので注意が必要です。
髪質の変化や薄毛が気になる場合には、まずは睡眠が十分とれているか、バランスのいい食生活ができているかをチェックしてみましょう。また喫煙の習慣がある人は、禁煙を選択肢に入れるのもおすすめです。
誤ったヘアケア
(出典:(13)髪の健康を考える〜美しい髪で過ごすには〜) (出典:(14)ヘアケアの科学)誤ったヘアケアも前髪がスカスカになってしまう一因です。毛が密集している頭皮は皮脂の分泌が活発な上に、整髪料などの影響で汚れやすい環境だとされています。また頭皮の新陳代謝によって不要な細胞はフケとなりますが、髪があることで剥がれ落ちにくくなっています。
これらの汚れを落として頭皮を清潔に保つために日々のシャンプーが推奨されていますが、誤ったヘアヘアは逆効果にもなり得ます。例を挙げると、肌質に合わないシャンプーや、頭皮に残った汚れなどです。
毛量や毛質の変化に不安がある場合は、シャンプー・コンディショナーの種類や洗髪方法を見なおしてみましょう。
スカスカな前髪・生え際の対策5選
スカスカになってしまった前髪や生え際は、少しでも早い段階で改善策を打っておきたいところです。ここからは薄毛対策におすすめの方法を5つ紹介します。
ヘッドマッサージで頭皮の血行を促進する
(出典:(15)地肌マッサージの頭皮への作用) (出典:(16)ホソカワミクロンが提唱する内外育毛ケア理論)ヘッドマッサージは頭皮ケアや薄毛対策でよく知られています。さまざまなマッサージ法が提唱されていますが、手指で頭皮を優しく揉んだり、さすったりして血行を促進するのが一般的です。
頭皮には毛細血管が張り巡らされており、髪への栄養は血管を通じて運ばれています。髪の発生・成長で重要な役割をもつ「毛乳頭」の周辺は毛細血管のさらに末端にあるため、加齢などの影響で血流が悪くなると栄養が十分に行き届かず、育毛に悪影響を及ぼします。
習慣的なヘッドマッサージで頭皮の血行を促進し、健康的な髪の成長を促しましょう。
シャンプーを見なおす
(出典:(17)ヘアケアの科学) (出典:(18)毛髪・頭皮にやさしい洗浄技術)シャンプーの見なおしも、スカスカな前髪や生え際への対策におすすめです。
シャンプーは頭皮や髪の皮脂汚れや整髪剤などを落とし、衛生的な状態を保つために大切なケアです。その反面、シャンプーに含まれる成分によっては頭皮のかゆみやフケ、炎症を招いてしまうこともあります。これは頭皮の乾燥によるバリア機能の低下が一因です。
頭皮の水分量を守りつつ優しく洗えるシャンプー・コンディショナーに変えることで、これらのトラブル改善が期待できます。頭皮環境を整えて髪の健やかな成長を促すために、日々使うシャンプーも見なおしてみましょう。
生活習慣を改善する
(出典:(19)走査型電子顕微鏡観察により明らかになった毛髪の損傷形態と栄養状態との関連) (出典:(20)ホソカワミクロンが提唱する内外育毛ケア理論) (出典:(21)良質な睡眠のための環境づくり -就寝前のリラクゼーションと光の活用-) (出典:(22)睡眠関連障害と全身性疾患をめぐって 5循環器疾患と睡眠)生活習慣の改善も薄毛対策におすすめの方法です。とくに食生活と睡眠は、髪の健康においても重要な要素です。
まずはバランスの良い食事を心がけましょう。とくに脂質が多かったり食物繊維が少なかったりする食事は、髪の傷みにつながりやすいことがわかっています。
次に十分な睡眠が取れているかどうかも確認してみてください。睡眠時間が足りなかったり良質な睡眠がとれていなかったりすると、頭皮を含む全身の血行が悪くなってしまいます。寝つきが悪い・眠りが浅い・寝起きが悪いなどの問題は、ストレスや運動不足、疲れが関わっているケースも少なくありません。入眠時だけではなく、日中の過ごし方の見なおしも必要になるでしょう。
育毛剤や発毛剤を使う
(出典:(23)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版) (出典:(24)身の回りの製品に含まれる化学物質シリーズ/化粧品) (出典:(25)ミノキシジルの発毛作用について)スカスカな前髪が気になる方には育毛剤や発毛剤の使用も検討してみましょう。
育毛剤はフケやかゆみ、脱毛の予防など、現在生えている髪や頭皮にアプローチする製品です。厚生労働省に認められた有効成分が配合されている「医薬品部外品」に分類されます。薬剤師のいないスーパーやドラッグストアでも入手できる手軽さも魅力です。
発毛剤は育毛剤よりも強い効果・効能が認められた「医薬品」で、医師の処方や薬剤師の説明を受けることが必要なものもあります。主な配合成分としては、血行促進や髪を作る細胞にはたらきかける「ミノキシジル」がよく知られています。文字通り「発毛」にアプローチできる薬剤です。
どちらも効果を感じるまでに一定期間以上の使用が必要ですが、薄毛や脱毛に悩む方から注目されています。
AGA治療を受ける
(出典:(26)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版)スカスカな前髪や生え際が気になるときには、AGA治療を受けるのもおすすめです。
近年では薄毛や脱毛は単なる生理現象と片付けられず、「AGA(男性型脱毛症)」として治療のためのガイドラインが設けられ、研究が進んでいます。
治療では脱毛の経過などを聞き取った後、実際に髪や頭皮の状態を見て診断が下されます。その後必要に応じて検査が行われ、フィナステリドやミノキシジルなど、日本で認可された内服薬や外用薬が処方されるのが一般的です。
なおAGA治療は保険適用外であり治療費はすべて自己負担となるため、クリニックや治療内容によって費用に差が生じます。
前髪のスカスカが目立たないおすすめのヘアセット方法
薄毛の悩みにはさまざまな対策がありますが、根本的な改善には時間や費用がかかります。「前髪がスカスカな状態を今すぐ何とかしたい」という場合には、ヘアセットを工夫してみましょう。
ここからはスカスカな前髪をカバーできるおすすめのヘアセット方法を紹介します。
ヘアカットではショートヘアをオーダーする
薄毛が気になる方におすすめなのはショートカットです。
髪の密度が薄い状態で長めの髪型にすると、地肌や生え際が透けて見えるためかえって薄毛が目立ってしまいます。ショートヘアにすることで髪が立ち上がりやすくなるため、ヘアセットをすることでボリュームが出やすく、薄毛の部分が目立ちにくくなります。
頭頂部の薄さが気になる場合はツーブロックやソフトモヒカンなど、トップにボリュームの出るヘアスタイルもおすすめです。
どのような髪型が似合うか迷う場合は、美容師に思い切って薄毛の悩みを打ち明けてみても良いでしょう。髪の状態を見て、薄毛をカバーできる髪型を提案してもらえるかもしれません。
ドライヤーの当て方を工夫する
ドライヤーの当て方も工夫しましょう。一方向から風を当てすぎると髪の流れがクセづき、髪の薄さが目立つはっきりした分け目ができてしまいます。前髪の薄さを目立たせないためには、分け目を目立たせないふんわりとした仕上がりが大切です。
以下の手順でドライヤーを当ててみましょう。
1 | 髪が乾いている場合はしっかりと水で濡らす |
2 | 頭頂部から前髪にかけて流したい方向と逆にドライヤーを当てる |
3 | ある程度乾いたら2と反対方向にドライヤーを当てる |
スタイリング剤をつけすぎない
ワックスやジェルなどのスタイリング剤を使用する際は、適量を守りましょう。思い通りのセットにするためにはスタイリング剤が不可欠ですが、つけすぎは逆効果です。水分・油分で髪が重くなり、ベタっとした仕上がりになってしまいます。
スタイリング剤を使う際は毛先を中心に少量ずつにしましょう。なお毛量が少ない方・毛質が柔らかく細い方は、水分量が少なくベタつきにくいドライワックスがおすすめです。
まとめ
「前髪がスカスカになってきた」「生え際が気になる」という方は、生活習慣の乱れやシャンプーを見なおすとともに、ヘッドマッサージや育毛剤・発毛剤の使用を考えてみましょう。また、専門機関でAGA治療を受けるのもひとつの方法です。「すぐに前髪のスカスカを目立たなくしたい」という場合には、ヘアセットやヘアスタイルを変えるのもおすすめです。
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