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シャンプー時の抜け毛の多さが気になっていて、その原因や対策の仕方を知りたい人もいるのではないでしょうか。
抜け毛には、実はふたつの種類があります。髪が抜けるからといって、必ずしも体に悪いことが起きているとは限りません。
今回は抜け毛の種類やシャンプー時に抜け毛が多い原因、抜け毛を防ぐ正しいシャンプーの方法を紹介します。
目次
抜け毛の種類
抜け毛には、自然脱毛と異常脱毛のふたつの種類があります。
自然脱毛
(出典:(1)ヘアケアの科学)一般的にシャンプーで髪が抜けてしまうことの多くは、自然脱毛により引き起こされます。自然脱毛とはヘアサイクルが休止期に突入することで自然に脱毛する現象です。
ヘアサイクルとは一定の周期をもって髪が成長と脱毛を繰り返すことで、周期は2~6年です。髪が伸び続ける成長期、成長がストップする退行期、脱毛しはじめる休止期の3つの段階があります。
1日あたりの自然脱毛による抜け毛の本数は、50~100本です。そのためシャンプーで抜けてしまう髪が数十本程度では、ほとんど心配はいりません。
異常脱毛
(出典:(2)男性型脱毛症と育毛有効成分)すぐに排水溝に髪が溜まるなど、シャンプー時の抜け毛が明らかに多いと気づいたら、異常脱毛を引き起こしている恐れがあります。異常脱毛とはヘアサイクルの乱れにより引き起こされる抜け毛です。
ヘアサイクルが乱れると成長期が短縮し、通常の状態よりも早く髪が抜けてしまいます。髪が十分に成長しきっていない段階で抜けてしまうので、毛量が少なく見えやすいのが特徴です。
抜け毛に関して以下のどれかに当てはまる場合は、異常脱毛を引き起こしている恐れがあります。
シャンプー時に抜け毛が多い原因
シャンプー時に抜け毛が多い場合に、考えられる原因を紹介します。
間違ったシャンプー
(出典:(3)低刺激性プロトタイプシャンプーの頭部皮膚疾患患者における使用評価―頭部皮膚疾患患者を対象とした臨床試験―)抜け毛が多い原因のひとつは、間違ったシャンプーです。シャンプーで頭皮や髪に負担がかかると、抜け毛が多くなってしまう恐れがあります。
以下のようなシャンプーをしていたり、使用していたりする人は注意しましょう。
間違ったシャンプーをすると皮脂を過剰に取り除いてしまったり、頭皮に必要な成分まで洗い流してしまったりして、皮膚のバリア機能が低下してしまいます。
皮膚のバリア機能が低下すると、乾燥やフケなどの頭皮トラブルが起こりやすくなり、ヘアサイクルが乱れて抜け毛が多くなることがあるので注意しましょう。
AGA (男性型脱毛症)
(出典:(4)毛と毛包の解剖・毛髪異常(AGA),(5)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)シャンプー時に抜け毛が多い原因のひとつに、AGAが挙げられます。
AGAとは前頭部や頭頂部を中心に髪が少しずつ薄くなっていく、男性に起こりやすい薄毛の症状のことです。AGAは男性ホルモンによるヘアサイクルの乱れで引き起こされ遺伝します。
男性ホルモンのテストステロンと、酵素の5αリダクターゼが互いに作用し合うとジヒドロテストステロン (DHT) が生成されます。このDHTが男性ホルモン受容体と結合することで発生するのが脱毛因子です。
脱毛因子の働きでヘアサイクルの成長期が短縮するため、抜け毛が多くなってしまいます。
進行する脱毛症なので早めの対策が必要ですが、市販の育毛剤などではあまり効果を期待できません。AGAが疑われる場合は、専門医に相談するとよいでしょう。
生活習慣の乱れ
(出典:(6)看護学生の食生活改善に向けた介入の効果,(7)第3章 主な医薬品とその作用)偏食や睡眠の質の低下など、生活習慣が乱れると抜け毛が多くなる恐れがあります。
偏った食事を続けていると、頭皮や髪に必要な栄養が行き渡りにくくなります。そのため好き嫌いをせず栄養バランスがよい食事をとるようにしましょう。
また睡眠不足などで睡眠の質が低下すると、成長ホルモンがあまり分泌されません。成長ホルモンには髪の成長を促す働きがあるので、質のよい睡眠をとるよう心がけることが重要です。
生活習慣を改善して抜け毛を防ぐために、食事や睡眠などに注意し規則正しい生活を送るようにしましょう。
ストレスの溜めすぎ
(出典:(8)画像解析によるマウスの体毛成長の評価,(9)日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)ストレスが溜まると、抜け毛が多くなる恐れがあります。なぜならストレスは髪の成長を遅らせると考えられるからです。
ストレスにより交感神経が優位に働くと、過剰にアドレナリンが分泌されて血流が悪化し、頭皮に栄養が行き渡りにくくなります。
またストレスは、円形脱毛症を引き起こす可能性もあるので注意が必要です。
適度に運動をしたり、趣味に費やす時間を増やしたりして、ストレスを発散する・溜めないような生活を心がけましょう。
紫外線による頭皮の炎症
(出典:(10)日焼け止めの科学)大量に紫外線を浴びると、ヘアサイクルが乱れて抜け毛が多くなる恐れがあります。紫外線により頭皮が炎症を引き起こすからです。
日差しが強い日に外出する際は、帽子をかぶったり髪用の日焼け止めスプレーを使ったりして、頭皮への負担を少しでもやわらげましょう。
喫煙
(出典:(11)喫煙の血行器に及ぼす影響 : 第一報 禁煙後に於ける喫煙の血行器に及ぼす影響)喫煙も髪の毛の成長を抑制し、抜け毛につながる可能性があります。
喫煙と髪の相関関係は見つかっていませんが、たばこに含まれるニコチンが体内に入ると血管が収縮し、血流が悪化します。血流が悪くなると頭皮や髪に必要な栄養が行き渡りにくくなり、ヘアサイクルが乱れる原因のひとつになると考えられます。
きっぱりと喫煙をやめるのが難しければ、1日に吸うたばこの本数や量を減らすことを検討してもよいでしょう。
加齢
(出典:(12)地肌マッサージの頭皮への作用,(13)老化による力学特性変化を考慮した皮膚のしわ特性解析)加齢も抜け毛が多くなってしまう原因のひとつです。
年齢を重ねると老化により頭皮が硬くなり、血流が悪くなります。その結果、頭皮や髪に必要な栄養が行き渡りにくくなり、ヘアサイクルが乱れます。
頭皮を柔らかくするための方法として、自宅でも手軽にできる頭皮マッサージがおすすめです。頭皮をマッサージすると血行が促進されて、頭皮や髪に必要な栄養が行き渡りやすくなります。
頭皮に負担をかけないために、マッサージの際は指の腹を使ってゆっくりとやさしく力を加えていきましょう。頭皮マッサージは入浴時に行うのがおすすめです。
抜け毛を防ぐ正しいシャンプーの方法
抜け毛を防ぐために、シャンプーの方法に注意してください。シャンプーをする際はしっかりとお湯で髪の汚れを落とし、手のひらで十分に泡立ててから、シャンプー剤をつけましょう。
髪を洗う際は、指の腹を使って頭皮をやさしく揉むようにマッサージしながら行うのがおすすめです。洗い終わったら、シャンプーの泡がなくなるまで時間をかけてすすぎましょう。
頭皮に負担をかけないために、爪を立てて強く頭皮をこすったり、洗い残しやすすぎ残しをしたりしないようにするのが重要です。
正しいシャンプーの仕方で異常な抜け毛を防ごう
抜け毛が気になりはじめたら、まずは自然脱毛または異常脱毛のどちらで髪が抜けているのかを判断しましょう。抜け毛の形や多さ、毛根の色に注目してみてください。
異常脱毛による抜け毛なら、生活習慣の乱れやストレスなど、さまざまなことが関係しています。普段の生活を一度振り返ってみて、できることから改善していくのがおすすめです。
とくにシャンプーの仕方に注意してみてください。頭皮を傷つけないことと、時間をかけてすすぐことの2点を意識してみましょう。
- 1).講座(シリーズ) “変わる”生活と消費科学 9
- 2).油化学/44 巻 (1995) 4 号
- 3).日本香粧品学会誌 Vol. 41, No. 1, pp. 15–22 (2017)
- 4).日本香粧品学会誌/42 巻 (2018) 2 号/ p. 93-97
- 5).日皮会誌:127(13),2017(平成 29) P.2763~2777
- 6).石川看護雑誌 = Ishikawa Journal of Nursing 9 53-59, 2012-03
- 7).厚生労働省 試験問題の作成に関する手引き(平成19年8月)
- 8).川崎医療福祉学会誌 Vol. 28 No. 1 2018 125-133
- 9).日本皮膚科学会雑誌/127 巻 (2017) 13 号/P. 2741-2762
- 10).表面科学/15 巻 (1994) 7 号/p. 473-478
- 11).日本循環器病學/2 巻 (1936) 3 号/書誌
- 12).日本化粧品技術者会誌/48 巻 (2014) 2 号
- 13).日本シミュレーション学会論文誌/1 巻 (2009) 4 号 66-73