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薄毛は男性だけではなく、女性にも起こる悩みです。
「髪の分け目が目立つようになってきた」「髪がボリュームダウンした」といった薄毛の悩みは、「びまん性脱毛症」が原因かもしれません。
びまん性脱毛症は、女性に多くみられる脱毛症のひとつですが、病名や特徴を知らない方も多いのではないでしょうか。本記事では、びまん性脱毛症の原因や症状、改善・対策方法などを解説します。
目次
薄毛に悩んでいる女性はどのくらいいるの?
(出典:(1)女性頭髪の加齢変化)40代〜50代の女性へのアンケート調査の結果から、約3割の方が「髪の毛が薄くなった」「髪の毛が少なくなった」と感じていることがわかっています。
また頭部を真上から撮影し、肉眼で判定した結果「やや薄い」と「かなり薄い」とされた割合は、10代〜30代が約20%、40代は約30%、50代は約40%でした。40代以降の女性に薄毛の悩みが多く現れることが明らかになっています。
女性に多いびまん性脱毛症とは?
(出典:(2)徳島県医師会)
びまん性脱毛症は女性が発症しやすい脱毛症です。
「びまん」というのは「広がりはびこる」という意味です。びまん性脱毛症はその意味のとおり、部分的ではなく、頭皮全体的に髪が薄くなるのが特徴です。またびまん性脱毛症は、3つのパターンに分けられています。
加齢変化
加齢により頭部全体の毛の本数が少なくなったり、細くなったり、脱毛が増えたりします。また皮脂の分泌が減ることで、髪が乾燥してツヤが減ります。
男性型脱毛症
男性ホルモンの影響が強くなることで起こります。頭頂部や前頭部にかけて、「髪が太くて長い毛」が「細くて短い毛」に変わるのが特徴です。
休止期脱毛症
ヘアサイクルの中で休止期にあたる毛の割合が増えることで起こります。若くても発症するケースがあるのが特徴です。
原因は特定されていませんが、ストレスやダイエット、薬や疾患などが要因ではないかといわれています。
びまん性脱毛症によくみられる症状
(出典:(3)毛髪医学通信 毛髪治療とは)びまん性脱毛症には、以下のような症状がみられます。
これらの症状がみられる場合、びまん性脱毛症を発症している疑いがあります。びまん性脱毛症は頭皮全体的に髪が薄くなるのが特徴です。
排水溝にたまる髪の量や、床に落ちる髪の量が増えることで抜け毛が増えたと感じるようになります。また髪のハリやコシがなくなり、髪型がうまく決まらなくなるといったことから、薄毛に気付く人も多いようです。そのまま進行していくと頭部の地肌が透けて見えるようになります。
びまん性脱毛症の進行は早い?
(出典:(4)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版)個人差がありますが、びまん性脱毛症はゆっくり進行するものとされています。長い年月をかけて、段階を踏んで薄毛が進んでいきます。
女性の薄毛、びまん性脱毛症の原因
女性の薄毛やびまん性脱毛症を引き起こす可能性があると考えられている要因は、複数あると考えられています。
ここでは主な原因とされている、3つの要因をあげていきます。
加齢
(出典:(5)女性ホルモンとライフステージ)(出典:(6)ライオン、女性の薄毛の原因を解明)
加齢により女性ホルモンの分泌が乱れると、自律神経が安定しなくなり、ヘアサイクルも乱れます。
女性ホルモンのひとつである「エストロゲン」は薄毛を防ぐために必要なホルモンです。更年期になるとエストロゲンが急激に減少するため、毛髪が細くなる、抜け毛が増えるなどの薄毛症状がより多く現れるようになります。
髪の栄養不足
(出典:(7)年をとっても大事な女性ホルモン ―ストレスは大敵―)(出典:(8)ストレスと疲労のバイオマーカー)(出典:(9)走査型電子顕微鏡観察により明らかになった毛髪の損傷形態と栄養状態との関連)(出典:(10)e-ヘルスネット ダイエット)
ストレスを慢性的に感じていると、自律神経が乱れ血行が悪くなります。髪の成長に必要な栄養は血液によって届けられるため、血行が悪い状態が続くと栄養が行きわたりません。
また食生活の乱れから栄養不足が続くと、髪の成長に必要な栄養が届かなくなってしまいます。不規則な食生活や過度な食事制限によるダイエットが薄毛につながることもあるので注意しましょう。
頭皮や体への負担
(出典:(11)髪の健康を考える〜美しい髪で過ごすには〜)(出典:(12)頭髪用パーマ液及びそれを使用した頭髪のパーマ方法)
誤ったヘアケアによる頭皮への負担から、びまん性脱毛症を起こす場合もあります。
肌質に合っていないシャンプーや洗浄力が強すぎるシャンプーは、頭皮に負担をかけてしまいます。また洗い過ぎも頭皮をいためる原因です。
またカラーリングやパーマも頭皮に大きなダメージを与えます。
なぜびまん性脱毛症は女性に多いの?
(出典:(13)Medical Note「女性型脱毛症」)(出典:(14)毛の発育制御機構解明における最近の進歩と育毛剤)(出典:(15)エストロゲンの機能とストレス~生涯を通じて健康を維持するために~)(出典:(16)美容医療 new horizon-幹細胞への期待-)
男性よりも女性にびまん性脱毛症が発症しやすい理由は、女性ホルモンにあります。ホルモンバランスの乱れが原因で、びまん性脱毛症を引き起こされることが多いためです。
女性ホルモンには男性ホルモンの働きを抑制する働きがあります。しかし更年期を迎えたり、ストレスやダイエットにより自律神経の乱れが引き起こされたりすることで、女性ホルモンの分泌は減少し、びまん性脱毛症が発生しやすくなります。
一方で男性の場合は、DHT (デヒドロテストステロン) という男性ホルモンが脱毛症の原因として知られています。男性ホルモンが原因の脱毛症は、ホルモン作用が起こりやすい部位から薄毛が広がるのが特徴です。つまり生え際や頭頂部といった特定の箇所から薄くなる傾向にあります。
男性の脱毛症は部分的に抜け毛が起こりやすいのに対し、女性によくみられるびまん性脱毛症は、頭皮全体の髪が薄くなるという違いがあります。
そのため男性の脱毛症は、発症に気付きやすいですが、女性の性脱毛症は、発症に気付きにくく、かなり進行してから気付くケースも少なくありません。
女性の薄毛やびまん性脱毛症の改善・対策方法
女性の薄毛やびまん性脱毛症の原因と考えられている要素のなかには、日々の生活に密接したものが多くあります。つまり生活習慣を見直すことで、予防や症状を改善できる可能性があるといえるでしょう。
今日からできる薄毛対策方法を5つご紹介しますので、日々の生活に取り入れてみてください。
食事を改善する
(出典:(17)健康と美を食べるもので叶える!~ 肌や髪、爪も美しく ~)(出典:(18)ビオチンの働きと1日の摂取量)
健康な髪を育てるために欠かせないのは、栄養バランスの整った食事を心がけることです。ダイエット中は栄養不足になりがちですので、特に気をつけるようにしましょう。
髪の成長を助ける栄養素は、タンパク質・亜鉛・ビタミンなどです。タンパク質は肉類・卵・乳製品、亜鉛は牡蠣・卵黄・チーズ、ビタミンはレバー・大豆・納豆などに多く含まれます。
しっかり栄養を摂ることは、髪の成長だけでなく体の健康維持にも役立ちます。
質の良い睡眠をとる
(出典:(19)”百薬の長”の効能のメカニズムを探る)(出典:(20)健康と生活習慣病予防における時間栄養学の役割)(出典:(21)寝具と睡眠)
髪を育てるために必要な成長ホルモンは、睡眠中に多く分泌されます。必要な睡眠時間は人によって違いますが、一番死亡リスクが低いとされる7時間睡眠がおすすめです。
また午後から夕方の間に運動をすると、成長ホルモンの分泌を促進できます。十分な睡眠時間を確保し、環境や寝具にも気を配ることで質の良い、深い睡眠がとれるようにしてみてください。
ヘアケア方法を見直す
(出典:(22)髪の健康を考える〜美しい髪で過ごすには〜)普段何気なく行っているヘアケア方法の見直しも、びまん性脱毛症の改善に有効です。
シャンプーを洗浄力の高いものから頭皮への刺激の少ないものに変え、シャンプーの回数は1日1回にしましょう。シャンプーをするときは爪を立てて強い力でゴシゴシ洗わず、指の腹で優しく洗うのもポイントです。
またカラーリングやパーマは頭皮へのダメージが大きいので、頻度を減らしましょう。
また健康な髪を育ててくれる育毛剤を使うのも、ひとつの手です。
ストレスを解消する
(出典:(23)疲労とストレス)(出典:(24)鉄ポルフィリン錯体誘導体による毛髪表面修復機構に関する研究)
社会で生活する上で、ストレスは誰もが受けるものですが、溜め込まずに発散することが大切です。ストレスを解消することは、自律神経を整え、髪の成長に影響する血行を良くすることにつながります。
どのような行動がストレス発散につながるかは人によって異なります。誰かといることが好きな人は友達とおしゃべりをする、一人でいることが好きな人は人と会わずに過ごす、体を動かすことが好きな人はスポーツをするなど、どんなことでも構いません。自分が楽しいと思えること、リラックスできることを探しましょう。
女性ホルモンの働きを補う
(出典:(25)ライオン、女性の薄毛の原因を解明)(出典:(26)大豆イソフラボンの安全性評価について(案))
びまん性脱毛症の主な原因である女性ホルモンの減少を、サプリメントや食材で補うことも、手軽にできる対策の一つです。
大豆に含まれるイソフラボンには、女性ホルモン「エストロゲン」と同じような働きがあります。イソフラボンを多く含む食材は、豆乳・豆腐・納豆です。安価で手に入りやすい食材が多いので、毎日の食事にも気軽に取り入れられます。
食材から女性ホルモンの働きを補うことで、ホルモンのバランスが整い、抜け毛を防ぐ効果が期待できるでしょう。
生活習慣を見直して健やかな髪を育てよう
びまん性脱毛症は放っておいても自然治癒は望めず、薄毛が進行していきます。薄毛に気付いたら、症状を改善するために少しでも早く対策を始めることが重要です。
まずは生活習慣を見直し、髪の成長に役立つ栄養を意識した食事、規則正しい生活、適切なヘアケアを続けていくことで、健やかな髪を育てましょう。
セルフケアで改善されない場合は、クリニックや病院での治療を検討してみてください。
- 1).皮膚 37巻 (1995) 6号 p.722-732
- 2).徳島県医師会
- 3).NPO法人「Future Medical Laboratory」 毛髪医学通信</li>
- 4).日本皮膚科学会雑誌 127巻 (2017) 13号 p.2763-2777
- 5).厚生労働省 働く女性の健康応援サイト
- 6).25).日経メディカル「ライオン、女性の薄毛の原因を解明」(2005年6月13日)
- 7).東京都健康長寿医療センター研究所「年をとっても大事な女性ホルモン―ストレスは大敵―」
- 8).日本薬理学雑誌 137巻 (2011) 4号 p.185-188
- 9).金城学院大学大学院人間生活学研究科論集 14巻 (2014) p.13-20
- 10).厚生労働省 e-ヘルスネット
- 11).22).順天堂醫事雑誌 59巻 (2013) 4号 p.327-330
- 12).国立研究開発法人 科学技術振興機構 J-GLOBAL「頭髪用パーマ液及びそれを使用した頭髪のパーマ方法」
- 13).Medical Note「女性型脱毛症」
- 14).日本化粧品技術者会誌 33巻 (1999) 3号 9.220-228
- 15).国際抗老化再生医療学会雑誌 2巻 (2019) p.11-18
- 16).日本香粧品学会誌 44巻 (2020) 1号 p.30-35
- 17).厚生労働省 働く女性の健康応援サイト
- 18).公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット
- 19).日本醸造協会誌 105巻 (2010) 5号 p.285-293
- 20).脂質栄養学 26巻 (2017) 1号 p.35-45
- 21).バイオメカニズム学会誌 29巻 (2005) 4号 p.189-193
- 23).バイオメカニズム学会誌 21巻 (1997) 2号 p.65-68
- 24).新潟大学 博士論文 「鉄ポルフィリン錯体誘導体による毛髪表面修復機構に関する研究」
- 26).内閣府 食品安全委員会 新開発食品専門調査会「大豆イソフラボンの安全性評価について(案)」