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乾燥する冬の空気や、真夏のエアコンにさらされている人の中には、頭皮の乾燥やこわばりが気になる人もいるのではないでしょうか。
頭皮の乾燥を放置すると、さまざまなトラブルの元となるため、早めの対策が肝心です。しかし中には、自分の頭皮に感じる違和感が乾燥によるものなのかどうか、判断に迷っている場合もあるかもしれません。
本記事では、頭皮の乾燥で何が起こるかや、乾燥が起こる原因、おすすめの保湿ケア方法などを紹介していきます。頭皮の乾燥や違和感にお悩みの人は、ぜひ参考にしてください。
目次
頭皮の乾燥による症状
フケ
(出典:(1)フケ抑制剤の評価と開発に関する研究) (出典:(2)私の治療方針)頭皮の乾燥は、フケの症状を招く場合があります。
フケは本来、古くなった角質細胞が頭皮から剥がれ落ちたもので、正常な生理現象です。しかし乾燥によって肌のターンオーバーの乱れが生じると、本来は剥がれ落ちるべきでない新しい角質まで剥離することがあります。
このようなケースで生じるフケは乾燥していて白いため、肩口などにポロポロとこぼれ落ちることで非常に目立ちます。
かゆみ
(出典:(3)ドライスキンとかゆみ) (出典:(4)「美しく健やかに」毛髪と地肌を洗浄する技術) (出典:(5)痒みに関する脳機能イメージング研究の展開)かゆみも頭皮の乾燥で起こる代表的な症状です。
乾燥状態の肌はバリア機能が低下しており、非常にデリケートな状態です。ささいな刺激も受けやすく、それがかゆみの症状となって現れることがあります。
かゆみを和らげようとして掻きむしると、さらにかゆみがひどくなることが知られています。肌ダメージが蓄積されていく悪循環に陥る恐れもあるため、入念な保湿対策でかゆみを抑えるのが肝要です。
薄毛や抜け毛
(出典:(6)ヘアケアの科学) (出典:(7)「美しく健やかに」毛髪と地肌を洗浄する技術) (出典:(8)男性型脱毛 ―その特性 と未来像)頭皮の乾燥は薄毛や抜け毛の症状を招く場合もあります。
乾燥によって肌のバリア機能が乱れると、頭皮が無防備な状態になり、外部からの物理的・化学的刺激などから頭皮を保護しきれません。中には頭皮に炎症が発生するケースもあります。これらのダメージによりヘアサイクルが乱れ、薄毛や抜け毛の要因となります。
なお男性の薄毛として代表的なものは、おでこが広くなっていくM型、つむじなどの頭頂部分が薄くなっていくO型、M型とO型が同時に現れるU型などです。特定の部位に薄毛が現れやすいのは男性の薄毛の特徴です。
頭皮が乾燥する原因
もともとの乾燥肌
(出典:(9)毛髪・頭皮に優しい洗浄技術) (出典:(10)ルームエアコンの使用実態と消費者意識に関する調査)そもそも乾燥肌の人は、頭皮も乾燥しやすいです。
頭皮は額などと比較し、水分量が少ない部位であるといわれています。肌の水分量が少ない乾燥肌の人は、普通肌の人よりさらに頭皮の水分量が少ないため、ますます頭皮がうるおいを失いやすいと考えられます。
冬場のエアコンは空気を乾燥させやすいため、頭皮の乾燥が気になる人は室内の湿度管理にも目を向けることが大切です。
ドライヤーでの乾かしすぎや乾かし残し
(出典:(11)ヘアケアの科学) (出典:(12)入院患者の頭髪および頭皮のブドウ球菌の汚染状況と洗髪による汚染除去の効果)ドライヤーに頼りがちな人も、頭皮の突っ張りや乾燥を感じやすくなります。とくに高温すぎる温度設定で長時間、至近距離からドライヤーをあててしまうと、頭皮の水分が蒸発しやすくなり乾燥が悪化します。
とはいえドライヤーを使わず、髪を濡れたまま放置するのもよくありません。頭皮や頭髪が長時間湿った状態だと、雑菌が繁殖しやすくなります。これはターンオーバーの乱れにつながり、頭皮がパサパサになる恐れがあります。
またタオルでこするようにして水分を拭きとっている人も要注意です。タオルの摩擦により、頭皮や毛髪にダメージを与えている可能性があります。
洗髪後は自然乾燥に頼るのではなく、低めの温度設定のドライヤーの風力を利用しながらすばやく乾かすのがポイントです。
誤ったシャンプー方法
(出典:(13)低刺激性プロトタイプシャンプーの頭部皮膚疾患患者における使用評価 ―頭部皮膚疾患患者を対象とした臨床試験) (出典:(14)教育シリーズ: 皮膚をみる人たちのための化粧品知識 洗浄料とその作用)誤った方法でのシャンプーも、頭皮のうるおいを奪って乾燥を招きやすくなります。
頭皮の皮脂が酸化することで皮膚の健康を損なう可能性があるため、頭部の汚れはしっかり落とすことが大切です。しかし洗浄力の強すぎるシャンプーの使用や、頻繁すぎるシャンプーなど過度の洗髪は、必要な皮脂分や保湿成分まで取り去ってしまいます。
適度な皮脂分や保湿成分は、外部からの異物混入や乾燥などを防止するために重要な物質です。これらが失われるとバリア機能が乱れて肌の水分が蒸発しやすくなり、肌乾燥が促進します。
シャンプーの主成分である陰イオン界面活性剤は、場合によっては皮膚の刺激になり得る物質のため、洗髪時には適温のお湯を使って十分すすぐことも大切です。このように正しいシャンプー方法を身につけることは、頭皮の保湿には欠かせません。
頭皮を保湿する効果的な方法
刺激の少ないシャンプーを選ぶ
(出典:(15)シャンプー) (出典:(16)化粧せっけん及びヘアシャンプーの泡立ちとソフト感) (出典:(17)アシルアスパラギン酸系界面活性剤の特性)正しいシャンプー方法を実践するのとともに、なるべく刺激を抑えたシャンプーを選ぶようにしましょう。界面活性剤にラウレス硫酸塩を使っている一般的なシャンプーより、さらにやさしい洗浄力が魅力のアミノ酸系やベタイン系の界面活性剤を使ったシャンプーがおすすめです。
頭皮の乾燥が気になる人は、スカルプケアシャンプーや、場合によっては保湿力の高い女性用シャンプーの利用も検討してみましょう。
シャンプー後に保湿ケアする
乾燥肌でお肌の水分が不足しがちな人は、シャンプー後の敏感な頭皮に保湿ケアをしましょう。
肌が弱っている人は、低刺激性のシャンプーを使っても乾燥肌の改善までに時間がかかります。お肌の状態に合わせ、保湿ローションなどで水分や油分、美容成分などを上手に補給し、頭皮のバリア機能をサポートしてあげることが大切です。
保湿におすすめの市販ケア用品については、のちほど詳しく解説します。
バランスよく栄養補給する
(出典:(18)e-ヘルスネット たんぱく質) (出典:(19)頭髪外来における内服・外用による男女の発毛治療)頭皮を乾燥から守って保湿するには、バランスよく栄養補給することも大切です。
頭皮や毛髪は毎日の食事で摂取する栄養分から作られます。皮膚や髪の主成分であるタンパク質や、生成を助けるビタミン類、生成時に酵素の役割を果たすミネラル分などの必要な栄養素が不足すると、健康な頭皮環境を損ねる可能性があります。なるべく偏食を避け、バランスのとれた食事をとるよう心がけましょう。
どうしても食事が偏りがちな場合には、サプリメントの利用も有効です。
質のよい睡眠を心がける
(出典:(20)清酒酵母による睡眠の質改善作用と機能性表示食品への応用) (出典:(21)就寝前のメディア利用が生体リズム及び睡眠の質に与える影響について)頭皮の保湿のためには質のよい睡眠を心がけましょう。とりわけ深いノンレム睡眠時には、成長ホルモンが盛んに分泌され、身体の修復が進むといわれています。
就寝前にテレビやゲーム、スマホなどのメディアを利用すると、睡眠の質を低下させることがわかっているので、眠りが浅いと感じている人は入眠直前の行動にも注意を払いましょう。
保湿に効果的なマッサージ
(出典:(22)地肌マッサージの頭皮への作用)
頭皮マッサージには頭皮の血行促進効果があります。血流がよくなると皮膚の健康維持に必要な栄養分が頭部にしっかり行き渡り、頭皮の保湿に役立ちます。
頭皮マッサージは次のような手順で行いましょう。
1 | 両耳の前後を人差し指と中指で挟むようにして、指の腹を使いながらゆっくりもみほぐす。そのまま指を顎の下へすべらせていく。 |
2 | 左側のうなじから胸にかけて、右手を使って流すようにさする。反対側も同様に行う。 |
3 | 親指と人差し指で耳たぶを挟み、円を描くようにしながら耳のふちに沿ってもみほぐしていく。耳の最上部に達したら、再度下方向に移動しながらマッサージしていく。 |
4 | 今度は耳たぶを耳の外側方向に強めに引っ張りながら、下から上に移動していく。 |
5 | 頭頂部に指の腹を添え、頭皮をつかみながら円を描くようにして3回動かした後、今度は3秒間指圧する。これを頭皮全体の6~8ヶ所に行う。 |
6 | 髪の生え際をもみあげ部分から上方に向かって、人差し指と中指を使って皮膚を上に引き上げるようにして圧迫していく。 |
7 | 額の中心の生え際部分に重ねた中指を添え、小さな円を描く要領で頭皮を動かすようにしながら圧迫していく。百会 (両耳の延長線と眉間の延長線の交わる部分) まで到達したら3秒間強めに圧迫した後、ゆっくり力を抜きながら手を離す。 |
8 | こめかみの生え際に指を当て、頭皮を引き上げるようにしながら頭頂部へ向かい、その後後頭部を通って下向きに少し強めに手ぐしを通す。これを合計3ヶ所、各2回ずつ行う。 |
9 | 両手の指先を使い、頭全体をリズミカルにはじくようにしてマッサージする。 |
10 | 後頭部のくぼみに人差し指と中指を置き、ゆっくり顎の上げ下げを繰り返す。これを3度繰り返した後、大きく深呼吸して終了。 |
保湿におすすめの市販ケア用品と選び方
低刺激シャンプー
(出典:(23)シャンプー) (出典:(24)化粧せっけん及びヘアシャンプーの泡立ちとソフト感) (出典:(25)皮膚の保湿メカニズム) (出典:(26)シャンプー・トリートメントによる毛髪の修復機構) (出典:(27)ヒアルロン酸ナトリウムの保湿性) (出典:(28)植物性セラミドの塗布および経口投与による皮膚保湿効果とその評価)頭皮の保湿のためには、低刺激シャンプーの利用がおすすめです。やさしい洗浄力が魅力のアミノ酸系やベタイン系界面活性剤を使ったシャンプーを選択しましょう。
また髪を構成する成分であるケラチンや、ケラチンと結合して傷んだ頭髪を補修するヘマチン、ヒアルロン酸ナトリウム、セラミドなどの保湿成分を含んだシャンプーも、頭皮や髪の保湿に役立ちます。
ヘアローション
(出典:(29)MPCポリマー配合ゲル状速乾性擦式アルコール手指消毒剤使用による皮膚機能変化の検討) (出典:(30)化粧品成分による貼布試験成績)頭皮をスムーズにうるおす頭皮用のヘアローションも、保湿対策に有効なアイテムです。
乾燥を避け効率的に保湿するには、なるべく刺激の少ない処方のローションを使用しましょう。アルコールや殺菌成分が配合された清涼感のあるタイプのローションは、人によっては頭皮に刺激を感じやすいため注意が必要です。
ヘアオイル
(出典:(31)O-1-C18 施設入所者におけるスキンケアの見直し-ベビーオイル保湿法の効果について-)ヘアオイルも頭皮の保湿には有効です。
オイル分は皮脂膜の代用となるため、水分の蒸発を防ぎうるおいを保つのに役立ちます。入浴直後の角質水分量が上昇したタイミングや、ローションで頭皮をうるおした後にオイルを使用するとより効果的です。
ヘアブラシ
(出典:(32)地肌マッサージの頭皮への作用) (出典:(33)ヘアケアの科学)ヘアブラシでブラッシングすると、頭皮へのマッサージ効果により血流促進が期待でき、保湿対策に役立ちます。
ブラシにはさまざまな素材のものがありますが、頭皮や毛髪への負担が少なく静電気を抑えられる獣毛のブラシがおすすめです。
育毛剤
(出典:(34)男性型脱毛症と育毛有効成分) (出典:(35)ホソカワミクロンが提唱する内外育毛ケア理論)育毛剤の利用も頭皮の保湿に有効です。
育毛剤にはホルモン剤や毛母細胞活性化成分のほか、保湿成分や栄養補給成分、血行促進成分など、頭皮環境を健やかに整える成分が入っています。そのため育毛剤を使い続けることで、頭皮にうるおいを与える効果が期待できます。
もちろん育毛に必要な栄養素の補給により、薄毛や抜け毛の予防にも役立つので、気になる人は毎日のケアに取り入れるのがおすすめです。
まとめ
頭皮の乾燥を放置すると、かゆみやフケのほか、薄毛や抜け毛などの困った症状が発生する場合があります。刺激を避けながら保湿を心がけ、頭皮トラブルを回避しましょう。
- 1).日本化粧品技術者会誌 27巻 (1993) 3号 p.394-408
- 2).皮膚 16巻 (1974) 3号 p.356-358
- 3).日本香粧品学会誌 38巻 (2014) 2号 p.92-95
- 4).7).日本化粧品技術者会誌 49巻 (2015) 4号 P.293-300
- 5).日本薬理学雑誌 127巻 (2006) 3号 P.147-150
- 6).11).33).講座 (シリーズ) “変わる”生活と消費科学 9
- 8).順天堂医学 37巻 (1992) 4号 p.572-586
- 9).J.Soc.Cosmet.Chem.Jpn. 特集総説47(1) 3-8(2013)
- 10).一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 56 (0), 231-231, 2004
- 12).愛知県立大学看護学部紀要vol.21 (2015) p.21-29
- 13).日本香粧品学会誌 41巻 (2017) 1号 p.15-22
- 14).日本香粧品学会誌 42巻 (2018) 4号 p.270-279
- 15).23).日本油化学会誌 18巻 (1969) 7号 p.364-373
- 16).24).日本油化学会誌 42巻 (1993) 10号 p.768-774
- 17).日本化粧品技術者会誌 53巻 (2019) 3号 p.207-214
- 18).e-ヘルスネット 厚生労働省
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- 22).32).日本化粧品技術者会誌 48巻 (2014) 2号 p.97-103
- 25).日本香粧品学会誌 37巻 (2013) 2号 P.95-100
- 26).高分子論文集 75巻 (2018) 1号 P.94-98
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- 28).臨床病理 55巻 (2007) 3号 P.209-215
- 29).日本環境感染学会誌 24巻 (2009) 1号 P.36-41
- 30).皮膚 21巻 (1979) 3号 P.265-268
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- 34).油化学 44巻 (1995) 4号 P.266-273
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