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頭頂部は薄毛が進行しやすい場所の一つです。
しかし自分の頭頂部を見て、「ただのつむじなのか、それとも薄毛なのか」と判断に迷うこともあるでしょう。
本記事ではつむじと薄毛の見分け方、頭頂部が薄毛になる原因、そしてその対策方法について解説します。
記事を読んでつむじと薄毛の違いを知り、自分が薄毛対策を始めるべきなのかどうかの参考にしてください。
目次
つむじとつむじの薄毛の違い
つむじ
つむじとは、頭の頂点にある地肌が露出している部分を指します。
つむじの大きさは個人差があるため、何センチ以上なら薄毛などと一概に言うことはできません。髪が健康な人でも髪が生えていないところが多少はあるのが普通です。
注目したいのは、地肌の色合いと髪の毛の太さです。
つむじ部分の頭皮が白っぽい肌色で、周りから生えている髪の毛が太くて丈夫であれば、薄毛ではなくただのつむじであると考えられます。
薄毛
薄毛であることが比較的わかりやすいのは、頭頂部が不自然なほど露出していたり、以前と比べてつむじが広がっていたりする場合です。
しかし判断がつかないことも多いでしょう。判断が難しいときは、頭頂部の頭皮の色と周囲の髪の太さをチェックします。
頭頂部が赤くなっていたら炎症を起こしている証拠です。炎症によって薄毛が進行している可能性が疑われます。
またつむじ周辺の髪の毛が細くて弱々しい見た目をしていたら、髪の毛が十分に成長できていない証拠なので、同じく薄毛が発症している可能性が高いです。
つむじの薄毛の特徴
頭頂部の地肌が透ける
薄毛を発症している場合、つむじだけでなく周辺の髪の毛も細くなってくるため、正面から鏡を見たときに頭頂部の地肌がうっすらと透けて見えます。
できるだけ明るいところで確認すると違いがわかりやすいです。
頭頂部の皮膚が赤くなる
(出典:(1)毛髪の紫外線ダメージ—評価指標とダメージケア—,(2)毛髪・頭皮に優しい洗浄技術)
つむじ部分が薄毛になっている人では、頭頂部の皮膚が赤くなっていることが多いです。
頭皮が赤くなるのは、炎症を起こして不健康な状態になっている証拠です。具体的には以下のようなケースが考えられます。
いずれの場合も、健康な髪が生えてくるのを阻害する要因になります。
つむじの毛の流れがわかりにくくなる
つむじ部分の毛は渦巻状に生えていて、右巻きか左巻きかのどちらかになっています。
髪の毛が健康な状態であれば、ひと目でどちらの方向に巻いているのかがわかるはずです。
しかし頭頂部の薄毛が進行していると、髪の毛のボリュームが減っていたり、髪の毛が細くなっていたりして、毛の流れがはっきりしなくなります。
スマホなどで写真を撮ってみて、つむじ部分の毛の流れが判然としない場合は、薄毛が始まっている可能性を疑いましょう。
頭頂部の髪が細くなる
(出典:(3)老化と毛髪変化)
薄毛が発症すると単に抜け毛が増えるだけでなく、髪の毛が細く弱々しくなってきます。
一般に「軟毛化」と呼ばれる現象です。
つむじ周辺の髪の毛を観察してみて、細くて短めの毛が多くなっていたら薄毛の可能性が高いと言えます。
つむじが薄毛になる原因
AGA
(出典:(4)毛と毛包の解剖・毛髪異常(AGA))
髪全体の中でつむじだけが目立って薄毛になっている場合、AGAの可能性が疑われます。
AGAは「男性型脱毛症」とも呼ばれ、成人男性に非常に多く見られるタイプの薄毛です。
AGAでは髪全体が均一に薄くなるのではなく、頭頂部や生え際などが局所的に薄くなります。
また進行性の脱毛症であり、一度発症すると薄毛部分が次第に広がっていくのも特徴です。
AGAのメカニズム
(出典:(5)男性型脱毛症のフィナステリド治療効果とアンドロゲン受容体遺伝子CAGリピート多型との相関性)
AGAは体内で「脱毛ホルモン」とも呼ばれるDHT (ジヒドロテストステロン) が増えることで発症します。
DHTは男性ホルモンの一種であるテストステロンが、5αリダクターゼと呼ばれる酵素と結合することで生み出されるホルモン物質です。
体内で作られたDHTは毛乳頭にあるレセプターによってキャッチされ、脱毛因子を増加させます。脱毛因子は毛乳頭を抑制する方向に働き、髪の毛を退行させ、抜け落ちるのを早めます。
結果として髪が十分に成長しきる前に抜け落ちてしまい、薄毛が進行するのです。
頭頂部にはたくさんの5αリダクターゼが存在する
(出典:(6)男性型脱毛症のフィナステリド治療効果とアンドロゲン受容体遺伝子CAGリピート多型との相関性)
AGAの原因であるDHTを作り出しているのは、5αリダクターゼと呼ばれる酵素です。
5αリダクターゼには2つの種類が存在します。
I型 | 全身の毛に広く分布する |
II型 | 前頭部の生え際・頭頂部・ヒゲに集中して分布する |
AGAと深く関係しているのはII型の方です。
AGAで生え際や頭頂部に薄毛が進行しやすいのも、それらの部位にII型の5αリダクターゼが多く分布していることが理由です。
逆に側頭部にはほとんど分布していないので、AGAが進行しても側頭部だけは髪が残ることが多くなっています。
5αリダクターゼは遺伝的要素が大きい
(出典:(7)男性型脱毛症のフィナステリド治療効果とアンドロゲン受容体遺伝子CAGリピート多型との相関性)
AGAの引き金となる5αリダクターゼの活性度については、遺伝的要素が大きく影響しているというのが定説です。
それに加えて脱毛ホルモンDHTをキャッチするレセプターの感受性の強さも遺伝によるところが大きいと言われています。
これら2つの特性が遺伝しやすいことから、両親や祖父母に薄毛の人がいた場合、AGAになりやすい体質であると言えるでしょう。
AGAクリニックなどでも初診の際には、家族の中に薄毛の人がいないかどうかをヒヤリングするのが一般的です。
もし親族につむじが薄毛になっている人がいるのであれば、AGA発症の可能性を警戒しておいたほうがよいでしょう。
頭皮環境の悪化
(出典:(8)洗浄料とその作用,(9)毛髪の紫外線ダメージ—評価指標とダメージケア—)
頭皮環境の悪化が原因でつむじが薄毛になるパターンもあります。
頭皮環境が悪くなる原因には以下のようなものが考えられます。
頭皮環境が悪いと毛穴が炎症を起こし、髪の毛の成長が阻害されます。また毛を支える部分が弱くなって、抜け落ちやすくもなります。
睡眠不足によるもの
(出典:(10)睡眠関連ホルモンの計測)
睡眠不足もつむじの薄毛を引き起こす原因の一つです。
髪の毛の発育を促す成長ホルモンは、眠っている間にもっとも多く分泌されます。
そのため睡眠時間が足りていないと、成長ホルモンの分泌が停滞して髪の毛の育ちが悪くなってしまいます。
また睡眠の質にも注意が必要です。ストレスや睡眠環境の悪さによって深い眠りにつけない場合も、成長ホルモンの分泌量は低下します。
つむじの薄毛の初期症状
弱々しい毛が増える
薄毛が発症するとヘアサイクルが乱れて、細くて弱々しい髪の毛が増えてきます。つむじ周辺の髪が細くなっていたら要注意です。
頭皮の油分が増える
(出典:(11)洗浄料とその作用)
頭皮の脂っぽさにも注意しましょう。頭皮が過度に油っぽいのは、頭皮のバランスが崩れている証拠です。
油分が多すぎると頭皮がダメージを受けやすくなり、また毛穴が詰まって髪の成長に悪影響を及ぼします。
頭皮が赤くなる
(出典:(12)毛髪・頭皮に優しい洗浄技術)
頭皮の赤みは炎症を起こしているサインです。つむじの部分が赤みを帯びていたら、炎症による薄毛の可能性を疑いましょう。
つむじの薄毛の治療法
薬物治療
(出典:(13)プロペシア(新薬のプロフィル),(14)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)
つむじの薄毛に対する薬物治療では以下のような薬が使われます。
プロペシア | 5αリダクターゼを抑制して抜け毛を防ぐ |
ザガーロ | 5αリダクターゼを抑制して抜け毛を防ぐ |
ミノキシジル | 毛乳頭を活性化して発毛を促す |
クリニックではこれらの薬を組み合わせて処方することが多いです。
また頭皮が炎症を起こしている場合は、炎症を抑えるための薬や、かゆみを抑えるための抗ヒスタミン薬などが用いられます。
メソセラピー
メソセラピーは薬剤や栄養剤を頭皮に直接注入するAGA治療です。
薬剤には髪の成長を促す成長因子やミノキシジルなどが主に使われます。また各種ビタミンや亜鉛などの栄養素が配合されているものも多いです。
植毛
(出典:(15)男性型脱毛症診療ガイドライン(2010年版))
つむじの薄毛を改善する上では植毛という手段もあります。
自毛植毛の場合は、側頭部や後頭部などAGAの影響を受けにくい部位から頭皮を切り取り、薄毛が進行している部位に移植します。
日常からできるつむじの薄毛の対策
育毛剤を使う
(出典:(16)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版)
日常でできる対策法としておすすめなのが育毛剤の利用です。
育毛剤には保湿成分や炎症を抑える成分などが配合されており、頭皮環境を整えるのに役立ちます。
育毛剤は医薬部外品扱いであり、医薬品に分類される発毛剤と違って、副作用の心配が少なく導入しやすい点もメリットです。
頭皮のマッサージ
(出典:(17)「ヘッドスパ」における頭皮マッサージ基本手技が心身に及ぼす影響)
頭皮マッサージは薄毛の改善にとても効果的です。
健康な髪の毛が育つには十分な栄養補給が欠かせません。しかし頭皮の血流が悪化していると、栄養素が毛根まで行き届かなくなり、薄毛を悪化させる一因になります。
お風呂上がりなどに手指を使ってやさしくマッサージを行えば、頭皮の血流を手軽に改善できます。
規則正しい生活
(出典:(18)髪の健康を考える〜美しい髪で過ごすには〜)
毎日規則正しい生活を送り、心身のバランスを整えることも薄毛の改善には大切です。
健康な髪は健康な生活からしか生まれてきません。生活習慣の乱れや過度のストレスは髪や頭皮の健康を損ない、薄毛の進行を早めてしまいます。
十分な睡眠
(出典:(19)睡眠関連ホルモンの計測)
最低でも1日6時間以上の睡眠時間を確保しましょう。
睡眠時間をしっかり取ることで成長ホルモンの分泌が促され、太くて丈夫な髪の毛が生えてきやすくなります。
寝る前にスマホをいじったり、カフェインの多い飲み物などを口にしたりすると、睡眠の質を低下させます。
睡眠前の1時間はリラックスして過ごし、深くて質の高い睡眠を取れるように工夫しましょう。
バランスのよい栄養をとる
(出典:(20)中村博範 「マウスのタンパク質栄養状態と体毛タンパク質合成の関係について」)
髪の毛は食べたものから作られるので、髪に必要な栄養素をしっかり摂ることが必要です。
特に気をつけて摂取したいのが以下の栄養素です。
タンパク質 | 髪の毛を構成するケラチンの材料になる |
亜鉛 | ケラチンの合成を促す |
ビタミンB2・B6 | 毛母細胞の分裂をサポートする |
ビタミンC | 血管を丈夫にして血流を良くする |
脂肪分や糖分の多い食事は皮脂の分泌を増やし、頭皮環境を悪化させる原因になります。食べすぎには注意しましょう。
喫煙を減らす
(出典:(21)禁煙科学 vol.9(06),2015.06)
タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させて血流を悪化させます。
頭皮の血流が悪くなれば、髪の毛に必要な栄養素が行き渡らなくなるため、薄毛を悪化させてしまうおそれがあります。
また喫煙は体内にある貴重なビタミンCを破壊してしまうので、髪の健康にとっては百害あって一利なしです。
自力でやめるのが難しい場合は禁煙外来などの利用も検討してみましょう。
飲酒量を減らす
(出典:(22)厚生労働省eJIM)
アルコールは適度であれば血流を促すプラスの面もありますが、過度の飲酒は厳禁です。
体内に入ったアルコールを分解する際、亜鉛が消費されます。しかし亜鉛は髪の毛を合成する上で必要不可欠の栄養素です。
毎日過度のアルコールを摂取していると、亜鉛が不足して髪の毛が育たなくなる可能性があります。
つむじの薄毛に関するまとめ
つむじと薄毛の見分け方や、つむじが薄くなる原因とその対策方法などを解説しました。
頭頂部は自分で目にする機会が少なく、薄毛が進行していても、なかなか気付きにくいです。
しかしAGAは進行性の脱毛症なので、放っておくと知らず知らずのうちに薄毛が広がっていくことも考えられます。
自分の頭頂部がただのつむじなのか、AGAの初期症状なのかをしっかりと見極め、早めの対処を心がけましょう。
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- 20).川崎医療福祉学会誌 Vol. 22 No. 2 2013 200 − 207
- 21).禁煙科学 9巻(2015)-06 P.1~P.14
- 22).厚生労働省eJIM >海外の情報> 亜鉛