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「これって薄毛の初期症状かも?」と思ったら、冷静になってセルフチェックを行ってみることが必要です。
本記事では薄毛の初期症状についてまとめ、本当に薄毛が始まっているのかどうかの見分け方や、もし薄毛だった場合の対処法などについて解説していきます。
薄毛は進行すればするほど改善が難しくなっていくため、薄毛の初期症状を見落としてしまうと、取り返しがつかなくなります。
ぜひ今のうちにチェックして、薄毛の初期症状なのかどうかを見極めておきましょう。
目次
薄毛の初期症状とは
頭頂部が薄い、または生え際が後退し始める
(出典:(1)毛と毛包の解剖・毛髪異常(AGA))
男性にもっとも多い薄毛はAGA (男性型脱毛症) と呼ばれるものです。
AGAの特徴は髪の毛全体が均一に薄くなるのではなく、頭頂部もしくは生え際だけが部分的に薄くなるという点です。
鏡で確認した時に、他の部位に比べて頭頂部だけ地肌が目立つ、もしくは生え際が前よりも後退しているようだったら、薄毛の初期症状である可能性が高いと言えます。
AGAは自然に治る可能性が極めて低い、進行性の薄毛です。できるだけ早い段階で対策を始め、薄毛の進行を食い止める必要があります。
髪の毛が細くなる
髪の毛が細くなるのも、薄毛の初期症状の一つです。
薄毛とは髪の毛が十分に育ちきらないままに抜け落ちてしまう状態を指します。か細くてコシのない髪の毛は、髪が発育不全に陥ってしまっている何よりの証拠です。
髪の毛の育ちが悪くなる原因としては、男性ホルモンの影響によるAGAや、栄養不足、頭皮の血行不良などが挙げられます。
もともとの髪質とは異なる、細くて柔らかい毛が増えてきたと感じたら、薄毛の初期症状を疑ってかかるようにしてください。
ヘアワックスで髪がまとまらない
ヘアワックスで髪がまとまりにくくなってきたら、それは薄毛のサインかもしれません。
薄毛の初期症状で髪からハリやコシが失われると、ヘアワックスをつけてもなかなか髪がまとまらず、セットしにくくなります。
ただし単に髪が傷んでいたり、乾燥したりしているだけの可能性もあるため、それだけでは薄毛であると断言することはできません。
あくまで一つの可能性として考えておき、それ以外に薄毛の兆候が現れていないかどうかを確認するようにしましょう。
抜け毛が増える
薄毛の初期症状としてもっとも多いのは、抜け毛が増えてくることです。
髪の毛はもともと生えたり抜けたりを繰り返すものなので、毎日100本ずつくらいは自然に抜け落ちています。
ただ抜け毛の量が以前よりも増えていると感じたら、薄毛の初期症状である可能性は十分にあります。
頭皮が硬くなる
(出典:(2)毛髪・頭皮に優しい洗浄技術)
頭皮が硬くなるのも薄毛の初期症状でよく見られる症状です。
頭皮が硬くなると血流が悪くなって、毛根に十分な栄養が行き渡らなくなります。すると発育不全の髪の毛が増えてきて薄毛の症状が出てきます。
頭に手を当てて頭皮をずらすように動かしてみてください。もし頭皮が簡単にずれ動かなかったら、頭皮が硬くなっていると判断できます。
フケが増える
(出典:(3)皮膚のバリア, 角層をめぐる炎症)
フケが増えるのも頭皮が荒れているサインの一つです。
フケが増えると毛穴が詰まりやすくなり、薄毛や抜け毛の原因になってしまいます。
もし大量のフケが出る場合には、ただの薄毛ではなく脂漏性脱毛症の可能性もあります。症状が激しい方は皮膚科を受診するようにしてください。
薄毛の初期症状を調べる時に見るポイント
前髪の生え際がどれだけ後退したか
薄毛の初期症状を調べる際、最初に確認したいのが生え際の後退具合です。具体的には眉毛から生え際までのおでこの広さをチェックします。
頭頂部であれば薄毛になっていれば一目でそれとわかりますが、生え際は普段から意識していないとなかなか変化に気づけません。
手を当てて指何本分と覚えておくのもいいですし、より正確に知りたい時はスマホで写真を撮っておきましょう。
もし以前に比べて生え際がほんの少しでも後退していたら、薄毛の初期症状であると考えられます。
抜け毛の毛根
抜け毛の様子を観察することも、薄毛の初期症状に気づくために大事なプロセスです。寝起きの枕元に落ちている髪の毛などを拾って見てみましょう。
健康な髪であれば、抜け毛の毛根部分がぷっくりと膨らんでいるはずです。この場合は自然な抜け毛と言えます。
逆に毛根に膨らみが見られなかったら、薄毛の初期症状による抜け毛の可能性が高いです。
頭皮環境
薄毛が気になり始めたら、頭皮の状態を観察するクセをつけましょう。かゆみやフケが出ていないか、頭皮が赤みを帯びていないか、定期的にセルフチェックを行います。
特にお風呂上がりは血流がよくなっており、頭皮が炎症を起こしている場合、赤みが強く出ます。炎症の有無が判断しやすいので、入浴後に鏡で確認するのがおすすめです。
髪の毛のハリや太さ
髪の毛のハリや太さも大事な指標です。
薄毛が始まっている人の髪の毛は、細くて柔らかくなっています。触った時の感触も弱々しく、弾力性に欠けています。
以前と比べて髪の毛の質が変わっていたり、頭頂部や生え際などに細い毛が目立って多く生えていたりした場合、薄毛の初期症状の可能性が非常に高いです。
朝起きた時の寝癖の有無
健康な髪に比べて、薄毛で弱った髪の毛は寝癖がつきにくくなります。髪全体のボリュームが少ない上に、寝癖がつくだけのハリやコシも失われているためです。
「最近はあまり寝癖がつかなくなった」「寝癖がついてもすぐに直せるようになった」などと感じている方は、少し気をつけて髪の毛の様子を観察しておきましょう。
薄毛を初期で見破るためにヘアサイクルを理解しよう
ヘアサイクルとは
(出典:(4)毛髪の科学と診断 第4版)
髪の毛は一定の周期で生えては抜けることを繰り返していて、この周期のことを一般にヘアサイクルと呼んでいます。
ヘアサイクルは以下の3つのフェーズに分かれています。
成長期が長い人ほど、太くて長い髪の毛が多く生えていることになるため、ボリューム感のある髪になります。
逆にヘアサイクルが乱れて成長期が短くなると、髪が育ちきる前に退行期や休止期に入ってしまいます。その結果髪がスカスカになってしまうのが薄毛の症状です。
健全なヘアサイクルを阻害するジヒドロテストステロン (DHT)
(出典:(5)男性型脱毛–その特性と未来像 Androgenic alopecia–Its characteristics and perspectives)
健全なヘアサイクルを乱し、男性の薄毛を引き起こす最大の原因物質が「DHT (ジヒドロテストステロン) 」です。
男性ホルモンであるテストステロンが「5αリダクターゼ」と呼ばれる酵素と結びつくとDHTに変化します。
DHTは髪の毛を作る毛母細胞に作用してヘアサイクルを乱し、髪の成長期を大幅に短縮させます。
DHTに影響を受けた髪の毛の成長期は1年未満にまで短縮されてしまうと言われており、薄毛を食い止めるためにはしっかりとした対策が必要です。
薄毛の初期で見分けたい自分の薄毛のタイプ
AGA (男性型脱毛症)
(出典:(6)毛と毛包の解剖・毛髪異常(AGA))AGAのタイプ
男性に多いAGA (男性型脱毛症) には、大きく分けて以上の3つのタイプがあります。
AGAのタイプ | 症状の特徴 |
O字型 | 頭頂部から円形に広がるように薄毛が進行する。上から見た時に「O」の字型になる。 |
M字型 | 左右のこめかみの生え際から薄毛が進行する。生え際が「M」の字型になる。 |
U字型 | おでこの生え際全体が後退する。生え際が「U」の字をひっくり返したような形になる。 |
日本人男性の薄毛の9割はAGAが原因と考えられています。
自分の薄毛の状況と照らし合わせて、当てはまる項目がないかどうかチェックしてみてください。
AGAの初期症状
AGAの初期症状としては以下のものが代表的です。
いずれも初期段階では些細な変化であり、なかなか気づきにくいかもしれません。
一度始まるとじわじわと進行しつづけるのがAGAの特徴です。早めに対策を打たないと手遅れになってしまうこともあります。
少しでも疑いを持ったら経過観察を怠らないようにしてください。
AGA以外の薄毛の原因
(出典:(7)日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版,(8)Malasseziaと脂漏性皮膚炎・アトピー性皮膚炎, (9)マラセチア関連疾患)
AGA以外の薄毛の原因には以下のものがあります。
AGA以外の薄毛 | 症状の特徴 |
円形脱毛症 | 髪が不自然な形で円形に脱毛する。見分けるのは容易。ストレスが引き金になりやすい。 |
脂漏 (しろう) 性脱毛症 | 皮脂の過剰分泌によって頭皮の常在菌が増え、炎症を起こすことで脱毛が起きる。フケやかゆみをともなう。 |
粃糠 (ひこう) 性脱毛症 | 大量のフケによって毛穴が詰まることで脱毛が起きる。かゆみをともなう。 |
以上の症状に当てはまる方は治療が必要な場合もあります。自分だけで何とかしようとせずに、一度医師に相談するようにしましょう。
薄毛の初期から始めたい対策
シャンプーのやり方を見直す
間違った方法でシャンプーをしていると薄毛の原因になることがあります。
頭皮は指の腹で優しく洗うようにしてください。濡れた状態の頭皮は脆くなっており、爪を立てたり力を入れすぎたりしてしまうと簡単に荒れてしまいます。
またシャンプーで頭を洗うのは1日1回までにしましょう。それ以上は頭皮の皮脂を奪いすぎて、乾燥を招いてしまいます。
生活習慣を見直す
(10)睡眠関連ホルモンの計測,(11)顕微鏡血流観察による有酸素運動前後の毛細血管血流速度の定量)
髪の毛は健康のバロメーターとも言われており、生活習慣の影響を強く受けます。
睡眠時間が足りなかったり不規則だったりすると、髪の毛を育てるための成長ホルモンの分泌が停滞し、薄毛を引き起こしやすいです。
髪のことを考えるなら、睡眠時間は1日6時間以上は最低でも確保してください。
また運動不足は全身の血行不良につながります。すると頭皮に十分な栄養が行き届かなくなって、薄毛を悪化させてしまうおそれがあります。
ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動をすると血行の改善につながります。
飲酒や喫煙は髪に悪影響を及ぼすため、できるだけ控えめにすることも大切です。
食事を見直す
(出典:(12)中村博範 「マウスのタンパク質栄養状態と体毛タンパク質合成の 関係について」)
薄毛の初期段階では食生活に気を配り、髪に必要な栄養素を意識して摂るようにしてください。
健康で丈夫な髪を増やすためには、髪の合成に必要な栄養素の補給が必要不可欠です。栄養素が足りていなければ、他にどのような対策をしたところで意味がありません。
肉類・魚介類・野菜・果物・海藻類・ナッツ類・大豆製品・乳製品などをバランスよく食べて、髪が元気になるような食生活を心がけましょう。
育毛剤・育毛サプリを飲む
(出典:(13)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)
薄毛対策には育毛剤や育毛サプリの活用も非常に効果的です。
育毛剤のメリットは、栄養素や育毛成分を頭皮に直接送り込める点です。保湿効果のある育毛剤も多いので、頭皮環境の改善にも役立ちます。
また育毛サプリを使えば忙しくて食事管理が難しい人でも、髪の毛に必要な栄養素を漏らすことなく補給でき、たいへん便利です。
育毛ケアを初期症状の段階でスタートすることで、薄毛を予防・改善できる可能性がぐっと高くなります。
お医者さんに相談する
最近では薄毛治療専門の病院やクリニックも存在しています。
自分が本当に薄毛の初期症状なのかわからない人は、一度医師の診察を受けてみるという手もあります。
ただし薄毛治療は保険の適用外なので、全額自己負担です。
薄毛初期に病院で受けられる治療
薄毛の初期に病院で受けられるのは、塗り薬や飲み薬を使った投薬治療がメインになります。
薬はその人の症状に合わせて処方されますが、発毛効果のある薬と抜け毛抑制効果のある薬の2種類を組み合わせて使うケースが多いです。
効果を実感するまでには半年~1年ほどかかると言われています。
投薬治療以外では、成長因子を頭皮に直接注入するメソセラピーなどもあります。
薄毛初期のよくある疑問
薄毛が目立たない髪型は?
薄毛は基本的にショートヘアの方が目立ちにくいです。
髪が薄くなるとつい髪を伸ばしてカバーしたくなりますが、それをすると髪のある部分とない部分がはっきり分かれてしまい、かえって薄毛が目立ってしまいます。
全体的に髪を短くカットしておけば、髪の薄い部分と普通の部分の差が小さくなり、傍から見て薄毛が気にならなくなります。
ソフトモヒカン・ベリーショート・ツーブロック・おしゃれ坊主などは、薄毛男性でも違和感なくおしゃれに決まるのでおすすめです。
薄毛で女性に嫌われないためには
男性が薄毛かどうかよりも清潔感があるかどうかを気にしています。
たとえ薄毛であっても、身なりに気を遣っている男性は女性の目に素敵に映ります。
むしろ薄毛を気にしすぎてファッションをおろそかにしたり、女性に対して卑屈な態度を取ったりすることの方が問題です。
薄毛でも似合う髪型、似合う格好はいくらでもあります。薄毛をコンプレックスに感じるのではなく、前向きに捉えた上で身なりを整えていきましょう。
薄毛初期にしたいことまとめ
薄毛の初期症状の見分け方や、薄毛の初期にしておくべき対策方法について紹介しました。
初期の薄毛はゆっくりと進行していきますが、確認すべきポイントを知っていれば早めに気づくことも可能です。
薄毛の改善のしやすさは、どの段階で対策を始められるかによって決まってきます。
もし薄毛の初期症状がすでに現れているのであれば、本記事で紹介した対策法をすぐに実践し、早い段階で薄毛対策をスタートさせましょう。
- 1).5).日本香粧品学会誌/42 巻 (2018) 2 号/ p. 93-97
- 2).J.Soc.Cosmet.Chem.Jpn. 特集総説47(1) 3-8(2013)
- 3).炎症/19 巻 (1998-1999) 6 号/ P. 319-330
- 4).毛髪の科学と診断 第4版 / 薬事日報社, 2012.11 / P.46
- 6).日本香粧品学会誌/42 巻 (2018) 2 号/ p. 93-97
- 7).日本皮膚科学会雑誌/127 巻 (2017) 13 号/P. 2741-2762
- 8).日本医真菌学会雑誌/46 巻 (2005) 3 号/ P.163-167
- 9).Medical Mycology Journal/53 巻 (2012) 2 号/P.97-P.102
- 10).生体医工学 46(2):169-176 解説特集:睡眠の生体計測技術
- 11).日温気物医誌第 78 巻 4 号 2015 年 10 月 353
- 12).川崎医療福祉学会誌 Vol. 22 No. 2 2013 200 − 207
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