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更新日:2023.08.21

円形脱毛症とは?概要や原因、治療方法、予防法を解説

監修者紹介
東京メモリアルクリニック理事長
佐藤 明男 医師
佐藤明男
さとう美容クリニック院長, 北里大学医学部客員教授, 日本形成外科学会専攻医, 日本臨床毛髪学会理事, 日本先進医師会特定認定再生医療委員会委員長, SKIファーマ株式会社副社長
頭髪に関する内科治療と外科治療まで幅広く実践し、毛髪研究、教育も積極的に行っている。  
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「髪の一部が突然ごっそりと抜けて戸惑った」という経験はありますか?

髪が突然抜けると不安になるものですが、予備知識があれば落ち着いて対処できるはずです。この記事では円形脱毛症の種類や原因、改善法について解説します。ご自身やご家族の健康のために、ぜひ役立ててください。

 

円形脱毛症とはどんな病気?

円形脱毛症とはどんな病気?

(出典: (1) 日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2010年版) (出典: (2) 日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017年版) (出典: (3) 円形脱毛症)

円形脱毛症とは毛髪の一部が抜け落ちる疾患です。頭髪だけではなく眉毛や髭など全身に発症する可能性があります。

人種や年齢、性別を問わず誰でも発症しうる病気で、発症率は人口のおよそ0.1〜0.2%と推定されています。

円形脱毛症は軽度であれば自然治癒することもある疾患です。しかし脱毛箇所が広範囲の場合や再発を繰り返す場合には、治療が必要となります。

円形脱毛症の主な原因

円形脱毛症の主な原因

円形脱毛症の発症原因として、以下の要因が関与していると考えられています

自己免疫疾患
アトピー素因
遺伝的要因
その他の要因

自己免疫疾患

(出典: (4) 日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017年版) (出典: (5) 自己免疫疾患)

円形脱毛症は「自己免疫疾患」の一種と考える説が有力視されています。

自己免疫疾患とは体にもともと備わっている免疫機能の異常により、免疫細胞が体の一部を異物と見なして攻撃してしまう病気です。

円形脱毛症は免疫細胞の一種である「T細胞 (Tリンパ球) 」が毛根を攻撃することによって生じると考えられています。

しかしなぜT細胞が毛根を攻撃してしまうのか、なぜ免疫細胞に異常が生じるのかは、現段階の医学では明らかになっていません。

アトピー素因

(出典: (6) 日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017年版) (出典: (7) Alopecia areata – Current understanding and management) (出典: (8) アトピー性皮膚炎)

アトピー素因」がある人は円形脱毛症を発症しやすいことが明らかになっています。

アトピー素因とは本人または家族にアトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎・鼻炎、気管支炎のいずれかの既往歴がある方、もしくはアレルギーに関与する「IgE抗体」が産生されやすい体質の方を指します

国内で行われたある研究では、円形脱毛症患者の半数以上で、本人もしくは家族にアトピー素因が認められたと報告されました。

遺伝的要因

(出典: (9) 日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017年版) (出典: (10) The genetic epidemiology of alopecia areata in China)

円形脱毛症の方が家庭内にいる場合、円形脱毛症を発症しやすいことが知られています

たとえば2004年に中国で実施された疫学調査では、円形脱毛症患者の8.4%に家族内発症があったこと、患者との関係 (親等) が近いほど発症率が上がることが報告されています。

その他の要因

(出典: (11) 日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017年版) (出典: (12) A review of psychiatric disorders comorbidities in patients with alopecia areata) (出典: (13) Estrogen and Progesterone Receptors in Androgenic Alopecia Versus Alopecia Areata)

自己免疫疾患、アトピー素因、遺伝的要因以外にも、以下の要因の関与が頻繁に指摘されています。ただし未解明の部分も多く、今後の医学的根拠の蓄積を待たねばなりません。

精神的なストレス
女性ホルモン(エストロゲン)の激減

円形脱毛症のタイプとそれぞれの症状

円形脱毛症のタイプとそれぞれの症状

(出典: (14) 日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017年版)
(出典: (15) Alopecia areata – Current understanding and management)

円形脱毛症は脱毛箇所 (脱毛斑) の数や発症部位、形状によって大きく5つの型に分類されます各型の特徴は下記の表をご覧ください。

症例としては「通常型」が一般的ですが、病状によっては「全頭型」や「汎発型」へと移行する可能性も指摘されています。

特徴
単発性通常型 (単発型) 脱毛が1箇所だけに認められる
多発性通常型 (多発型) 脱毛が複数箇所に認められる
蛇行型 頭髪の生え際に帯状の脱毛が認められる
全頭型 頭部全体に脱毛が認められる
汎発型 頭部だけでなく全身に脱毛が認められる

円形脱毛症の治療・改善方法

円形脱毛症の治療・改善方法

ここでは現在主流の治療法を3つご紹介します。治療を実施する際は主治医の診断に従ってください。

ステロイド局所注射
内服薬
外用薬

ステロイド局所注射

(出典: (16) 日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017年版) (出典: (17) 副腎皮質ステロイド)

ステロイド局所注射とは抗炎症作用のあるステロイド剤を脱毛斑に注射する方法です

脱毛範囲が狭い場合には有効な治療法ですが、脱毛範囲が広い場合には注射量が増えるため、後述する他の治療法も視野に入れる必要があります。

ステロイド局所注射は成人の通常型円形脱毛症の方に対して有効とされる治療法です。ステロイドには糖尿病・肥満・消化器不全などの副作用が認められます。また小児に対しては原則使えません。

内服薬

(出典: (18) 日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017年版)
(出典: (19) ヤヌスキナーゼ (JAK) 阻害剤バリシチニブ錠 オルミエント®︎錠)

円形脱毛症の治療で処方される薬は複数ありますが、現段階で特効薬は確立されていません

「円形脱毛症診療ガイドライン2017」によると「ステロイド内服療法」は「行ってもよい治療法 (C1) 」に分類されています。

前述のようにステロイドによる副作用のリスクが懸念されるため、ステロイド以外の内服薬が使用されることもあります。たとえばアレルギー症状を緩和する薬や、血流を促進する作用のある薬です。

なお2022年に新しい内服薬として、オルミエント®︎錠が承認されました。

以下のように難治患者限定ではあるものの、円形脱毛症の内服薬として期待されています。

  • 頭部全体の概ね50%以上に脱毛が認められる
  • 過去6ヵ月程度毛髪に自然再生が認められない

外用薬

(出典: (20) 日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017年版) (出典: (21) 円形脱毛症に対するセファランチンと他剤の併用療法の有効性に関する検討)

「円形脱毛症診療ガイドライン2017」では「ステロイド外用療法」が「行うよう勧める治療法 (B) 」に分類されています。

その他の選択肢として、抗炎症作用のある「ステロイド」と抗アレルギー作用のある「セファランチン」を組み合わせる治療法や、「セファランチン」と血管拡張作用のある「塩化カルプロニウム液」を組み合わせる治療法などもあります。

円形脱毛症を治療する際のポイント

円形脱毛症を治療する際のポイント

円形脱毛症は継続的な治療が大切です。寛解と再燃を繰り返す可能性があるためです。

治療期間が数ヶ月から数年に及ぶこともありますので、治療そのものだけではなく、QOL (生活の質) を維持することをぜひ大切にしてください。

たとえば主治医と相談のうえ、医療用ウィッグなどを取り入れるのも選択肢のひとつです。

円形脱毛症を早期発見するには

円形脱毛症を早期発見するには

(出典: (22) 日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017年版)

円形脱毛症を早期発見するには体の違和感・サインにいち早く気づくことが大切です

円形脱毛症は自覚症状が無いことも多いですが、初期症状として以下の特徴が現れる場合があります。

当てはまる項目が複数ある場合は必要に応じて皮膚科専門医の助言を仰ぎましょう。

脱毛箇所が円形または楕円形をしている
頭皮に違和感やかゆみがある
頭皮にむくみを伴う紅斑がある
爪に小さなでこぼこがある
アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、結膜炎、気管支炎のいずれかの既往歴がある

円形脱毛症の予防・対策

円形脱毛症の予防・対策

ここでは円形脱毛症の予防法と対策について、3点に絞って解説します。

円形脱毛症の発症原因についてはいまだ解明されていない点も多いですが、生活習慣を見直し、心身をすこやかに保つことが予防につながると考えられます

ストレスを軽減する
睡眠時間を確保する
糖質を摂り過ぎない

ストレスを軽減する

(出典: (23) 自律神経失調症)
(出典: (24) 毛髪科学最前線—ヘアケアから再生医療まで—毛と毛包の解剖・毛髪異常 (AGA) )

精神的なストレスを軽減することは、円形脱毛症の予防につながります

先述の通り、円形脱毛症とストレスの直接的な関係は解明されていません。しかし過度なストレスにより、「交感神経」と「副交感神経」のバランスが乱れると、血流が悪くなります。血流が悪くなると毛髪に栄養が行き渡らず、抜け毛が増える恐れがあります。

日常生活でできるだけリラックスする時間を設けるなどして自律神経のバランスを整え、抜け毛を予防することが大切です。

睡眠時間を確保する

(出典: (25) 眠りの休息効果)
(出典: (26) 自律神経失調症)
(出典: (27) The risk of alopecia areata and other related autoimmune diseases in patients with sleep disorders)

睡眠の質を向上させることは円形脱毛症の予防につながります。睡眠時には「成長ホルモン」の分泌が促進されるためです。

成長ホルモンは身体組織を修復してくれるホルモンです。そのため成長ホルモンがしっかり分泌されないと、頭皮や髪の修復がしっかり行われず、新しい髪が育ちにくくなります。

また睡眠時には副交感神経が優位になります。副交感神経には血管を拡張する働きがあるため、頭皮や髪にも栄養が行き渡りやすくなるでしょう。

2018年に発表された韓国での研究では、45歳未満で睡眠障害を抱える人は同世代で睡眠障害を抱えていない人と比べて、円形脱毛症のリスクが有意に高いことが報告されています。

糖質を摂り過ぎない

(出典: (28) ビタミン総論) (出典: (29) ビタミンB群)

糖質を摂り過ぎないことは円形脱毛症の予防につながります。砂糖などの糖質を摂りすぎると、育毛に必要な「ビタミンB群」が不足しやすくなるためです。

ビタミンB群は皮膚をすこやかに保つ役割をはたしており、不足すると頭皮環境が悪化する恐れがあります。

強い毛根を育てるために、糖質の摂り過ぎには注意しましょう。

脱毛した部分をうまく隠す方法

脱毛した部分をうまく隠す方法

ここでは脱毛した部分を隠す方法を5つ紹介します。

ヘアアレンジ
ファッション小物
ヘアファンデーション
ヘアピース
フルウィッグ

円形脱毛症は命に危険が及ぶ病気ではありませんが、見た目に変化が現れるため、社会生活に不安や心配を抱える方は多いでしょう。脱毛部分を隠すことで、脱毛によるストレスを軽減し、QOL(生活の質)の維持・向上させることも大切です

ヘアアレンジ

軽度の円形脱毛症の場合には、ヘアアレンジを工夫することで脱毛箇所を隠せるかもしれません

また美容室などで髪型をオーダーする際に、脱毛箇所が目立ちにくい髪型にしてもらえるよう相談してみましょう。

ファッション小物

帽子やバンダナなどの小物を取り入れることで、おしゃれを楽しみながら、脱毛箇所を違和感なく隠せます

ただし身につける小物は、頭皮への負担が少ないものを選びましょう。頭皮環境をすこやかに保つためです。

たとえば汗をかいても蒸れにくい通気性の良い素材を選ぶなど、身につける小物の素材に配慮することがポイントです。

ヘアファンデーション

ヘアファンデーションとは髪や頭皮に塗布して使うメイクアップ道具です。おしゃれ染めや白髪隠しなど、さまざまな用途のヘアファンデーションが販売されています。

ヘアファンデーションで地肌に色をつければ、脱毛箇所を自然に隠せます。汗や雨で濡れても落ちにくい、ウォータープルーフ効果のあるものを選ぶのがおすすめです。

眉毛など頭髪以外にも脱毛がある場合には、化粧品やアートメイクで補うことも選択肢のひとつです。

ヘアピース

ヘアピース (つけ毛) とはウィッグの1種です。頭頂付近にピンなどで固定し、地毛に重ねることで髪にボリュームを持たせられます。

脱毛箇所が少ない場合には、ヘアピースを活用することで脱毛箇所を自然に隠せます。フルウィッグを使うことに抵抗がある方は、まずはヘアピースを試してはいかがでしょうか。

フルウィッグ

フルウィッグは帽子やバンダナなどと同様に、頭部全体を覆い隠すものです

ウィッグのメリットは屋内や冠婚葬祭など、帽子を着用しにくい場面でも違和感なく使える点です。医療向けのウィッグであれば、比較的軽量でメンテナンスも容易です。

脱毛の度合いやTPOに合わせて、ファッション小物とウィッグをうまく使い分けるのがおすすめです。

円形脱毛症対策は治療とQOL向上の2軸を大切に

円形脱毛症は誰もがなりうる病気です。命に関わる病気ではありませんが、症状が外見に現れることから、社会生活に支障をきたす場合もあります。治療を進めると同時にQOLを高めるための工夫もしながら、長期的な視点で症状とうまく付き合っていくことが大切です。

円形脱毛症は早期発見すれば自然治癒できることもあります。日頃から体のサインに気を配り、気になる症状がある場合には早めに皮膚科専門医等の診断を受けましょう

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