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成人男性の4人に1人が悩まされている「薄毛」。放っておくとどんどん進行してしまうため、早めに治療を始めなければいけません。しかしいざ治療するとなると、「どの治療法がいいだろう」と不安な方も多いと思います。
そこでこの記事では、薄毛治療の種類そして効果的な治療方法を選ぶ方法について解説していきます。
目次
薄毛治療の種類とそれぞれの効果
(出典:(1)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版,(2) 男性型脱毛–その特性と未来像 Androgenic alopecia–Its characteristics and perspectives,(3)Ritsuko Ehama 「Infuluence of Scalp Problem on Physical Properties of Hair and Their Prevention by Plant Extracts」)
投薬治療
薄毛が進行してしまう原因は2つあります。
投薬治療では上の原因を取り除けます。
投薬治療は大きく分けて二種類あります。
効用 | 薄毛の進行を遅らせる治療薬 | 発毛力を高める治療薬 |
剤型 | 飲み薬 | 飲み薬or塗り薬 |
薬名 | サガーロ、アボルブ、プロペシアなど | ロゲイン、ミノタブ、アロビックスなど |
服用できない人 | 女性、20歳未満、肝機能障害 | 20歳未満、人工透析中、心機能・腎機能障害、高圧薬服用中 |
薄毛の進行を遅らせる治療薬
(出典:(4)毛と毛包の解剖・毛髪異常(AGA),(5)プロペシア(新薬のプロフィル))ザガーロ (デュタステリド)
ザガーロは、2015年に認可された最も新しい治療薬です。汎用性は高いですが、その一方で副作用が起こる可能性が高いことも報告されています。副作用は勃起不全や食欲減退、精液量減少など症状が17.1%の確率で起こります。
まずは副作用の少ない治療薬から試していき、より効果を強めたい場合にザガーロを服用するというのが一般的な使われ方です。
アボルブ
アボルブは元々前立腺肥大症の治療薬として開発されましたが、後にAGAに男性ホルモンの分泌量が関連していることが分かり、薄毛治療薬として使われるようになった治療薬です。
主成分、添加物ともにほぼザガーロと同じで、効果もほぼ変わりません。そのため同じ薬として判断されることもあります。
プロペシア
AGA治療薬として最初に認可されたのがプロペシアです。DHT (ジヒドロテストステロン) という男性ホルモンを抑制することで、薄毛の進行を遅らせます。
プロペシアの特徴は、効果が高く副作用が少ないことです。販売元の臨床実験によると1mgのプロペシアを服用し続けた場合、1年で約58%、2年で68%、3年で78%の薄毛改善効果が確認されています。副作用として性欲減退・肝機能障害がありますが、その発現率0.5%と低い水準になっています。
また成人男性ならばほぼすべての人に使用できるのも特徴の1つです。
プロペシアのジェネリック
プロペシアと主成分・効能・副作用を同じとするジェネリックが他の製薬会社から販売されています。2019年の段階では8つ製薬会社が取り扱っていて、それぞれ製造法や添加物が異なります。
血流の促進などで発毛力を高める治療薬
(出典:(6)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)ロゲイン
ロゲインは「ミノキシジル」が主成分となっていて、毛母細胞の活性化と血行促進に効果があり、外用薬にすることで副作用のリスクを抑えられます。起こる副作用はかゆみ、湿疹、じんましん、皮膚炎などの症状で8%の確率で起こります。
後述するミノタブに比べると効果は落ちますが、その分リスクは低い治療薬です。
市販されているものだと、大正製薬「リアップ」シリーズなどがあります。
ミノタブ
ロゲインと同じく「ミノキシジル」が主成分です。高い発毛効果は期待できますが、薄毛治療薬としての認可は受けていません。
これはロゲインが元々降圧薬として開発されたからです。心機能や血圧に悪影響を及ぼす恐れがあるため、薄毛治療に使用する際には、必ず医師の判断が必要になります。
また3~8%の確率でかゆみや脱毛、発熱、吐き気、動悸、頭痛といった副作用がでることが確認されています。
アロビックス
アロビックスはフロジン液のジェネリックです。血行を改善する「カルプロニウム塩化物」が含まれているため、毛の成長を促進してくれます。
この治療薬のメリットは、保険が適用されることです。
また円形脱毛症や女性特有の脱毛など、AGA以外の治療にも効果があります。副作用は発汗や悪寒、刺激症状、かゆみ、接触皮膚炎など。頻度は不明です。
自毛植毛
後頭部の目立たない部分から毛根を採取し、薄毛部分に移植する治療法です。
産毛すらない状態だと既に毛根が死滅しているため、投薬治療や注入治療では効果がありません。その場合は自毛植毛が必要になります。
方法 | 自身の毛根を薄毛部分へ移植 |
治療回数 | 1回(手術時間は平均6時間、日帰り可) |
治療期間 | 手術後約1年で新しい毛が生えそろう |
治療を受けられない人 | 移植元となる毛がない、糖尿病、皮膚疾患や瘢痕がある、精神疾患 |
1回の手術で終わるので短期間で治療できるのがメリットです。
また自毛植毛には「FUT術」と「FUE術」の2通りがあります。それぞれの特徴を紹介します。
– | FUT術 | FUE術 |
方法 | ・メスを使用・後頭部を切開し移植毛ごと採取 | ・メスを使わない・移植毛を1株ごとパンチでくり抜く |
メリット | ・広範囲の移植に向いている・FUE術に比べて手術費が安い | ・後頭部の傷が目立たない・術中や術後の痛みが少ない・後頭部を刈り上げずに手術が可能な場合がある |
デメリット | ・後頭部に線傷が残る・手術時に痛みがある | ・広範囲の移植には向かない・移植範囲が広いと傷跡が目立つ・FUT術に比べて手術費が高い |
最新治療
(出典:(7)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版,(8)多血小板血漿 (PRP) のヒト培養毛乳頭細胞に及ぼす影響と育毛への効果,(9)多血小板血漿 (PRP) のヒト培養毛乳頭細胞に及ぼす影響と育毛への効果)
まだ扱っている病院は少ないですが、既存の治療法より効果があると期待されている治療法です。従来の治療法で効果が感じられなかった場合、持病の影響で受けられない場合には以下の方法が有効かもしれません。
1.LED照射
投薬や注入治療の補助をする治療です。低出力レーザーを頭皮に照射して発毛を促進します。
2.ヘアフィラー
注入治療の1つです。従来の成長因子より純度が高い「ペプチド化合物」を薬液として使用するため、高い効果が期待できます。
施術回数は4~12回、治療終了まで2ヶ月~半年かかります。
3.PRP毛髪両方
注入治療の1つです。自信の血液から採取した成長因子を使用するため副作用のリスクが低いのが特徴です。
施術回数は2~6回、治療終了まで平均半年かかります。
育毛剤・育毛シャンプー
(出典:(10)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版,(11)洗浄料とその作用)
育毛剤・育毛シャンプーに発毛効果はありませんが、頭皮環境を正常にすることで育毛効果が期待できます。
髪の毛には「成長する→抜け落ちる→生えてくる→成長…」といったサイクルが存在します。薄毛になる原因は、このサイクル中の「成長する」段階が短くなってしまうからです。
サイクルの乱れは基本的に男性ホルモンが原因で、二次的要因として不健全な頭皮環境も関係しています。そのため頭皮環境を正常に戻してくれる育毛剤や育毛シャンプーは薄毛に対して効果が期待できるでしょう。
効果的な薄毛治療の選び方
症状の進行度
薄毛の進行具合によって治療法を決めます。例えば現在脱毛箇所がほぼなく薄毛の進行を食い止めたい場合は投薬治療が有効です。
このように進行度によって適切な治療法があるのです。
治療にかかる期間
「投薬治療、注入治療、自毛植毛」の順に治療期間が短くなり、理想の期間に合った治療を選ぶことが大切です。
持病と体質
持病によっては治療方法が限られます。特に心機能・腎機能の疾患や糖尿病、妊娠中・授乳中の方は注意が必要です。
効果的な薄毛治療薬を選ぶポイント
(出典:(12)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)
改善したい症状に効くか
治療薬には「抜け毛を防ぐ薬」と「発毛力を高める薬」の2種類があります。薄毛の進行を止めたいのか、新しい毛を生やしたいのか、どちらが目的なのかを考えた上で治療薬を選択しましょう。
ちなみに併用も可能です。
リスクは少ないか
治療薬によって副作用があり、それぞれ症状や副作用が出る確率が違います。また体質や持病によってはリスクが高くなることがあります。
例えば低血圧や心機能の異常を抱えて要る場合は発毛力を高めるタイプの薬は危険です。また肝臓に疾患がある場合は治療薬の服用には注意が必要となります。
薄毛治療薬の注意点
薄毛が改善するまでは治療薬を使用し続けなければいけません。これは薄毛治療薬は服用をやめた時点で効果がなくなってしまうからです。
また
などの注意点があります。
薄毛治療のQ&A
薄毛治療を受けられない人もいる?
AGA以外の薄毛の場合は記事内で紹介した投薬治療を受けられないことがあります。これは、AGA治療薬は他の脱毛症には効果がないからです。
病院に行く前に、自分がAGAなのかチェックしてみるといいかもしれません。
治療費をすぐに用意できない場合は?
分割払いなどに対応している病院を利用することで解決できます。
薄毛治療は基本的に保険が適応されないため、全額自己負担となります。
一度に払えない場合は、
これらを利用できる病院から選びましょう。
植毛と増毛は何が違う?
植毛と増毛の違いは以下の通りです。
増毛の場合、今生えている毛に負担がかかってしまうため、さらに薄毛が進行してしまう可能性もあります。また地毛が伸びると結び直さないといけないため、定期的なメンテが必要です。
病院に通わなくても治療はできる?
育毛剤や発毛剤を使えばある程度可能です。その場合は病院で処方される治療薬に比べると即効性が低く、効果も薄くなってしまいます。
薄毛治療を受けるなら病院の皮膚科?
一般病院の皮膚科でも治療は受けられますが、投薬治療しかできません。そのため注入治療や自毛直毛を希望する場合は、AGA専門の病院か美容皮膚科に通うべきです。
薄毛治療に保険はきく?
基本的に保険がきかないため、すべて自己負担となります。また医療費控除も適用されません。
ただし例外として、
など病気の場合は医療費控除の対象となる場合があります。
薄毛の治療方法のまとめ
ここまで薄毛治療について紹介しました。一口に薄毛治療と言っても、様々な種類の方法があります。
現在の状態や治療期間などを考え、あなたに最適な治療法を選んでみてください。
- 1).6). 7). 10). 12). 日皮会誌:127(13),2763-2777,2017(平成 29) P.2763~2777
- 2).特集 脱毛性疾患の病態と治療 / 順天堂医学37(4) 1992 年 37巻 4 号 p. 572-586
- 3).J. Son. Cosmet. Chem. Jpn. 52(1) : 16-23
- 4).日本香粧品学会誌/42 巻 (2018) 2 号/ p. 93-97
- 5).ファルマシア/42 巻 (2006) 2 号/ P. 164-165
- 8).岡山医学会雑誌/124 巻 (2012) 2号 P.101-104
- 9).聖マリアンナ医科大学雑誌/46 巻 (2018) 3 号/P.137-145
- 11).日本香粧品学会誌 Vol. 42, No. 4, pp. 270–279 (2018)