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年齢が若いにもかかわらず、抜け毛の増加や額が広くなったなどの変化が見られると不安になるかもしれません。
「まだこの年齢で薄毛になるわけがない」と思って放置していると、進行してしまうことがあるので早めに対処しておくことが大切です。
そこでこの記事では若者の薄毛の種類や原因、進行を抑制するための対策を解説します。
目次
若い世代でも起こる薄毛とは?
若い世代での薄毛は、主に若年性脱毛症です。一般的に10〜20代の若い時期に発症するAGA (男性型脱毛症) を指します。
若年性脱毛症のタイプ
(出典:(1)男性型脱毛–その特性と未来像 Androgenic alopecia–Its characteristics and perspectives)
若年性脱毛症のタイプは主に以下の3つがあります。この3つのタイプのいずれか、あるいは複数合わせて起こるのが特徴です。
O字型は頭頂部から円形に薄毛になり、進行すると側頭部と後頭部のみ髪が残ります。
M字型は左右のおでこの生え際が後退してM字のようになるタイプです。進行すると側頭部と後頭部の髪が残ります。
U字型は前頭部から頭頂部へと髪が抜け始めるタイプです。進行すると側頭部と後頭部の髪が残り、U字のように見えます。
若年性脱毛症の判断基準
(出典:(2)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)
若年性脱毛症かどうかの明確な判断基準はありませんが、以下の症状が出てくるとAGAを発症している可能性が高いです。
知らないうちに抜け毛が増えていることもあるので、「この年齢で薄毛になるはずがない」と思い込んでいると、気づきにくくなってしまいます。
季節にも左右されますが、正常な抜け毛の範囲は1日100本以内です。
鏡を見て特に変化がなくても、洗髪時やブラッシング時、起床時に抜け毛が増えていないかチェックしておきましょう。頭頂部はチェックしにくいので、写真を撮ってチェックすることをおすすめします。
髪のボリュームがなくなった、セットしづらいと感じ始めたらAGAを疑いましょう。
若年性脱毛症の原因
(出典:(3)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)
薄毛の遺伝子は引き継がれやすいので、身内に薄毛の人がいる場合は遺伝だと考えられます。
AGAの発症に関与しているのは、男性ホルモンです。テストステロンと呼ばれる男性ホルモンと5αリダクターゼという酵素が結合し、男性ホルモンの一種であるDHT (ジヒドロテストステロン) が生成されます。
このDHTが頭皮の受容体 (アンドロゲンレセプター) に結合することで、髪を作る細胞の活動を抑制するタンパク質が増加し、ヘアサイクルが乱れて薄毛になるのです。
5αリダクターゼの活性度とアンドロゲンレセプターの感受性の強さは遺伝で決まります。そのため身内に薄毛の人がいる場合は、要注意です。
若いうちの薄毛を進行させる要因として考えられることは?
ここでは、AGA以外で若いうちの薄毛を進行させる要因として考えられることについて解説していきます。
ストレス
(出典:(4)疲労とストレス)
大きなストレスがかかった状態が続くと自律神経やホルモンのバランスが乱れ、髪を作る細胞の機能が低下します。その結果、薄毛が進行してしまうことが考えられます。
生活習慣の乱れ
(出典:(5)中村博範 「マウスのタンパク質栄養状態と体毛タンパク質合成の関係について」,(6)第3章 主な医薬品とその作用)
栄養バランスの偏った食事や睡眠不足の生活を続けていると、髪の成長に必要な栄養の不足などにより、髪の成長に支障が出ます。
髪はケラチンというタンパク質でできており、タンパク質が不足すると髪が細く弱くなるのです。
また髪の成長には睡眠中に分泌される成長ホルモンが欠かせません。睡眠不足が続くと成長ホルモンが十分に分泌されなくなるので、髪の成長が阻害されてしまいます。
間違ったヘアケア
(出典:(7)低刺激性プロトタイプシャンプーの頭部皮膚疾患患者における使用評価―頭部皮膚疾患患者を対象とした臨床試験―)
間違ったヘアケアは、頭皮環境に悪影響を及ぼし薄毛を促進させてしまう恐れがあります。
以下のことが当てはまる場合は改善が必要です。
あまり髪を洗わない、汚れや整髪料がついたまま寝てしまっていると頭皮環境が悪化してしまいます。
逆に何度も髪を洗いすぎると、皮脂が洗い流され乾燥しやすくなり、抜け毛が増えてしまうので注意が必要です。
若いうちの薄毛の進行を抑制するための対策
若いうちの薄毛の進行を防ぐには、症状が軽いうちに対策を始めることが大切です。何もしなければどんどん進行し、元の状態に戻すのが難しくなります。
生活習慣を見直す
(出典:(8)e-ヘルスネット たんぱく質,(9)頭髪外来における内服・外用による男女の発毛治療)
若いうちの薄毛の進行を抑えるには、生活習慣を見直しましょう。
高カロリー・高脂質な食べ物ばかりなど偏った食生活を送っている場合は、栄養バランスの良い食事を心がけることが大切です。髪の成長に欠かせないタンパク質や亜鉛、ビタミンを意識的に摂取するようにしましょう。
また成長ホルモンの分泌を促すために、睡眠時間は最低でも6時間は確保したいところです。
正しいヘアケアを行う
正しいヘアケアを行うことも、薄毛の抑制に繋がります。
正しいシャンプーの方法で髪を洗い、シャンプー中に頭皮マッサージをするのが効果的です。髪を洗ったら、すぐにドライヤーで乾かすようにしましょう。
正しいシャンプーの方法
(出典:(10)洗浄料とその作用)
正しいシャンプーの方法は以下のとおりです。
生え際と後頭部は洗い残しが多い部位なので、念入りにすすぎましょう。
頭皮マッサージの方法
頭皮マッサージはシャンプーをよく泡立ててから、以下の手順で行いましょう。
ストレスを溜め込まないようにする
ストレスをこまめに発散して、頭皮環境が悪化しないように心がけましょう。ストレス解消方法は、以下などがあります。
自分なりのストレス発散方法を見つけて、ストレスを溜め込まないようにしましょう。
AGA治療を受ける
(出典:(11)毛と毛包の解剖・毛髪異常(AGA),(12)男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版)
若年性脱毛症(AGA)が原因の場合、医師に相談して治療を受けるのも有効です。
薄毛の進行を抑制する治療薬は、デュタステリド内服薬とフィナステリド内服薬の2種類が、発毛を促す治療薬は、ミノキシジル外用薬があります。ミノキシジル内服薬もありますが、日本では承認されていません。
若いうちに薄毛が気になってきたら早めに対策しよう!
「年齢が若いから無縁だ」という思い込みから、薄毛が進行していることに気づくのが遅れるケースは少なくありません。
軽度のうちに対策や治療をすれば改善しやすいので、生活習慣の見直しなどの対策をしましょう。
- 1).特集 脱毛性疾患の病態と治療 / 順天堂医学37(4) 1992 年 37巻 4 号 p. 572-586
- 2).3).12).日皮会誌:127(13),2763-2777,2017(平成 29) P.2763~2777
- 4).バイオメカニズム学会誌/21巻 (1997) 2号
- 5).川崎医療福祉学会誌 Vol. 22 No. 2 2013 200 − 207
- 6).厚生労働省 試験問題の作成に関する手引き(平成19年8月)
- 7).日本香粧品学会誌 Vol. 41, No. 1, pp. 15–22 (2017)
- 8).e-ヘルスネット 厚生労働省
- 9).WAARM Journal, 2018; 1: 40–42
- 10).日本香粧品学会誌 Vol. 42, No. 4, pp. 270–279 (2018)
- 11).日本香粧品学会誌 Vol. 42, No. 2, pp. 93–97 (2018)