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更新日:2024.01.26

【医師監修】頭皮の痛みの原因は?対処法や考えられる病気も解説

監修者紹介
東京メモリアルクリニック理事長
佐藤 明男 医師
佐藤明男
さとう美容クリニック院長, 北里大学医学部客員教授, 日本形成外科学会専攻医, 日本臨床毛髪学会理事, 日本先進医師会特定認定再生医療委員会委員長, SKIファーマ株式会社副社長
頭髪に関する内科治療と外科治療まで幅広く実践し、毛髪研究、教育も積極的に行っている。  
監修者一覧

頭皮が痛いと「何が原因だろう」「もしかして病気かな」と心配になるものです。また毎日のヘアケアのたびに痛みを感じると、日常生活でも困ってしまいます。

この記事では、頭皮が痛いときに考えられる病気とその特徴、受診する場合の目安を解説しています。それぞれの病気の原因や対処法もあわせて紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

頭皮が痛いときに考えられる日常生活上の原因

頭皮が痛いときに考えられる日常生活上の原因

日常生活を送るうえで、頭皮の痛みの原因を自ら作ってしまっていることがあります。痛みの原因となり得るものは以下の5つです。

ヘアケアの方法が誤っている
日焼け
食生活の乱れ
姿勢が悪い
ストレス

当てはまるものが無いか確認しながら読んでみてください。

ヘアケアの方法が誤っている

(出典:(1)接触皮膚炎診療ガイドライン2020) (出典:(2)MSDマニュアル家庭版 接触皮膚炎) (出典:(3)MSDマニュアルプロフェッショナル版 毛包炎) (出典:(4)鉄ポルフィリン錯体誘導体による毛髪表面修復機構に関する研究)

シャンプーなど毎日のように使用する洗髪剤が体質に合っていない場合、接触性皮膚炎を起こす可能性があります。

またシャンプーのやり方も重要です。強くこすったり爪を立てて洗ったりすると、頭皮にキズをつけてしまうかもしれません。頭皮の摩擦やキズは、毛包炎を悪化させる要因となります

さらに髪を乾かす際にも注意が必要です。ドライヤーの熱風は約120℃の高温なので、ドライヤーを必要以上に使ったり頭皮に近づけすぎたりすると頭皮へのダメージとなります。

日焼け

(出典:(5)紫外線環境保健マニュアル)

日光には紫外線が含まれています。頭皮が紫外線による刺激を受けると、炎症を起こしてヒリヒリとした痛みを感じるのです。曇っている日でも、薄い雲であれば紫外線の80%が雲を通過します

こまめに室内に入り、連続して日光を浴びないようにしても、紫外線による炎症を起こすことがあります。暴露する紫外線の量は、1日を通して蓄積していくからです。

また私たちが浴びる紫外線は、太陽から直接届くものだけではありません。紫外線は空気中で散乱したり地面や建物に反射したりして、日陰にも到達します。日陰で日光を遮ることができても、紫外線を完全に遮ることはできません。

食生活の乱れ

(出典:(6)ビタミンCと皮膚機能とくに大量持続投与と欠乏実験) (出典:(7)e-ヘルスネット たんぱく質)

栄養バランスの偏った食生活は、健やかな皮膚を維持するうえで好ましくありません。とくにビタミン不足が皮膚トラブルを引き起こす旨の報告は数多く存在します

またたんぱく質も重要な栄養素です。皮膚や毛髪を作り出すには、たんぱく質が不可欠だからです

自身の食生活を見直して、ビタミンやたんぱく質を十分に摂れているか確認してみてください。

姿勢が悪い

(出典:(8)大後頭神経三叉神経症候群を呈した1症例) (出典:(9)Quint Dental Gate 頭部前方位姿勢)

頭部前方位姿勢と呼ばれる、あごを突き出した状態で猫背のように前屈みになる姿勢は、頭皮神経痛の原因になり得るとの報告があります。姿勢の悪さが頭皮の神経を刺激すると考えられているからです。

頭部前方位姿勢はパソコンを操作しているときや運転中に起こりやすいとされています。デスクワークがメインで長時間パソコンを使っている人や運転時間が長い人は、前屈みの姿勢にならないように日頃から気をつけましょう。

ストレス

(出典:(10)ストレスによる免疫能の変化と脳・免疫連関) (出典:(11)Malassezia furfurの引き起こす皮膚の炎症・免疫反応)

ストレスも頭皮の痛みにつながる要因のひとつです。

ストレスが蓄積すると免疫機能が低下することがわかっています。免疫低下によって細菌やウィルスなど外部刺激に対する体の抵抗力が弱まると、炎症が発生しやすくなり、頭皮の痛みにもつながりやすいです。

ストレスが溜まっているときは、風邪にもかかりやすいという研究報告もあります。頭皮の痛みをはじめとするさまざまな不調を防ぐためには、ストレスを溜め込みすぎないことが肝要です。

今日から試せる頭皮の痛みの対処・対策法

今日から試せる頭皮の痛みの対処・対策法

頭皮の痛みを予防する方法、すでに出ている痛みの対策方法は、以下の5つです。

ヘアケア用品を変える
ヘアケアの方法を変える
栄養バランスをとる
姿勢を整える
ストレスを溜めない

ヘアケア用品を変える

(出典:(12)接触皮膚炎診療ガイドライン2020) (出典:(13)MSDマニュアル家庭版 接触皮膚炎)

頭皮に毎日触れる、シャンプーやコンディショナーなどの日用品を変えてみてください。ヘアケア用品が体質に合っていない場合、接触皮膚炎やニキビの原因となることがあるからです。

また育毛剤を使用している部分に痛みがあるときは、育毛剤が原因である可能性も十分に考えられます。使いはじめは問題なくても、使い続けるうちに皮膚症状が出てくることもあります

よかれと思って使っているヘアケア用品でも、実は頭皮に合っておらずトラブルを引き起こしているかもしれません。頭皮の状態を確認しながら、定期的にヘアケア用品を見直すことをおすすめします。

ヘアケアの方法を変える

(出典:(14)洗浄料とその作用) (出典:(15)接触皮膚炎診療ガイドライン2020)

まずはシャンプーのやり方を見直してみてください。爪を立てたり強い力でこすったりすると、頭皮トラブルの元となる可能性があります。シャンプーは指の腹でマッサージするようにやさしく行ってください

またカラーリング剤も接触皮膚炎の原因になることがあります。頻繁にカラーリングをしている人で頭皮に痛みがある場合、カラーリングの頻度を下げるか、カラーリング剤を変えるといいかもしれません。

紫外線対策をする

(出典:(16)MSDマニュアルプロフェッショナル版 尋常性ざ創)

紫外線による刺激を減らすためにも、長時間日光を浴びることが避けられない場合は帽子や日傘が必須です。頭皮に使える日焼け止めもあるので、上手に活用してください。

一方で、帽子の被りすぎも要注意です。頭皮が汗でムレるとニキビができやすくなるからです。帽子は紫外線対策として心強いですが、屋内でははずす、通気性のよい帽子を選ぶなど、頭皮がムレないような手立ても必要かもしれません

栄養バランスをとる

(出典:(17)日本ビタミン学会 やさしいビタミンの話) (出典:(18)e-ヘルスネット たんぱく質)

皮膚や体の健康を保つには、栄養バランスのとれた食事が不可欠です。栄養の中でもビタミンは、皮膚の健康に深く関与しています。とくに以下のビタミンは、欠乏により皮膚炎などを起こすことが知られています。

ビタミンB2
ビタミンB6
ナイアシン
ビオチン
パントテン酸

またたんぱく質は皮膚や毛髪を構成する重要な栄養素です。以下にビタミンやたんぱく質が豊富に含まれる食品をまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

栄養素 食品
ビタミンB2 レバー、塩サバ、納豆
ビタミンB6 マグロ、牛レバー、鶏ささみ
ナイアシン まいたけ、かつおぶし、落花生
ビオチン レバー、大豆、卵黄
パントテン酸 レバー、落花生、マッシュルーム、卵
たんぱく質 肉類、卵類、豆類

姿勢を整える

(出典:(19)大後頭神経三叉神経症候群を呈した1症例) (出典:(20)姿勢の整え方ー「背筋をのばす」ではなく「腰を立てる」ー)

悪い姿勢は頭皮神経痛を引き起こす可能性があります。つまり姿勢を正すことで頭皮神経痛を予防したり改善したりできるかもしれません。デスクワーク時を想定して、理想的とされる座位姿勢を紹介します。

首・胸・骨盤の中心が縦に一直線になっている
猫背になっていない
背中を反りすぎていない
股関節・膝関節がほぼ直角で、足の裏が地面に着いている

上記のポイントを参考に、椅子の高さを調節するなどして理想の姿勢を目指してみてください。

ストレスを溜めない

(出典:(21)ストレスによる免疫能の変化と脳・免疫連関)

慢性的なストレスが免疫反応を弱めることが報告されています。免疫反応が弱まって抵抗力が落ちた結果、毛包炎や帯状疱疹など病原体による病気を発症してしまうかもしれません。

ストレスを溜めないためには、こまめにストレスを発散することが不可欠です。リラックスしたり運動したり、自分の趣味に没頭したりする時間を設けてください。

全身のストレッチは、リラックスしながら軽い運動にもなるのでおすすめです。

頭皮の痛みを引き起こす病気とは

頭皮の痛みを引き起こす病気とは

頭皮が痛いときに考えられる病気には、以下のものがあります。

接触皮膚炎
毛包炎
尋常性ざ瘡(ニキビ)
後頭神経痛
帯状疱疹

それぞれ詳しく紹介していきます。

接触皮膚炎

(出典:(22)接触皮膚炎診療ガイドライン 2020) (出典:(23)MSDマニュアル家庭版 接触皮膚炎)

接触皮膚炎は外部からの刺激によって起こる湿疹です。接触皮膚炎を起こした皮膚は、赤くなったり盛り上がったりします。

接触皮膚炎は刺激性接触皮膚炎とアレルギー性接触皮膚炎の2つに分類され、刺激性接触皮膚炎の割合が全体の80%を占めます。刺激性接触皮膚炎では、かゆみよりもヒリヒリとした痛みの頻度が高いのが特徴です

刺激の少ないシャンプーや育毛剤などでも、使い続けることで接触皮膚炎の原因となることがあります。

毛包炎

(出典:(24)皮膚科Q&A 毛が伸びる、または生えかわる仕組みはどのようになっているのでしょうか?) (出典:(25)MSDマニュアルプロフェッショナル版 毛包炎)

毛包炎とは毛包と呼ばれる毛を囲っている部位(毛穴)に細菌が感染し、炎症を起こしている状態です。症状としてかゆみや軽度の痛み、刺激感がみられます

毛包炎を起こしている部分は、赤っぽくなったり膨れ上がったりすることが多いです。また炎症部位の毛は抜けやすくなり、引っ張ると簡単に抜けてしまいます。

原因はさまざまですが、頭皮の摩擦やキズ、汗、頭皮の被覆が細菌感染を助長することがわかっています

尋常性ざ瘡(ニキビ)

(出典:(26)MSDマニュアルプロフェッショナル版 尋常性ざ瘡) (出典:(27)皮膚科Q&A 大人のにきびとは?)

尋常性ざ瘡とはいわゆるニキビのことで、発症する原因は毛穴の皮脂づまりです。毛穴に皮脂が詰まっている状態を面ぽうと呼びます。毛穴の先が閉じた面ぽう内でアクネ菌と呼ばれる常在菌が増殖して炎症を起こします。

ニキビの原因は、主に思春期に起こる急激なホルモン分泌の変化による、皮脂の過剰分泌です。その他の要因は以下のものがあります。

シャンプーなどの洗髪剤
高い湿度
ストレス
不規則な生活
不適切なスキンケア

頭皮神経痛

(出典:(28)頭蓋表層の解剖学的要因による頭皮神経痛と頭痛―眼窩上神経痛・後頭神経痛・開頭術後頭痛―) (出典:(29)大後頭神経三叉神経症候群を呈した1症例)

頭皮の感覚をつかさどる神経に、眼窩上神経(三叉神経の一部)と大後頭神経があります。頭皮神経痛はこれら2つの神経がなんらかの原因により刺激を受けた結果、頭皮がピリピリ傷んだりしびれたりする病気です

特徴的な症状は以下のとおりです。

痛みは一瞬または短時間で、痛みが無いときもある
違和感やしびれ感がある
感覚が過敏になる
押すと痛む部位がある

原因ははっきりしないことが多いのですが、姿勢の悪さにより大後頭神経が刺激を受けて発症するケースがあると考えられています。また大後頭神経への刺激は、眼窩上神経にも伝わることが知られています。

帯状疱疹

(出典:(30)MSDマニュアルプロフェッショナル版 帯状疱疹) (出典:(31)MSDマニュアル家庭版 帯状疱疹)

帯状疱疹は、水痘帯状疱疹ウイルスに感染することによって発症します。1回でも水ぼうそう(水痘)にかかったことがある人は注意してください。水痘の症状が治まった後も、ウイルスはからだの中に潜伏し続けているからです。

体内に潜伏したウイルスがなんらかの原因により再活性化すると、帯状疱疹が生じます。再活性化する要因はほとんどの場合不明です。

症状は痛みやしびれ、発疹などです。発生初期には痛みやしびれを感じ、その後2〜3日以内に発疹を生じます

片側のみに発症することがほとんどで、頭部では前頭部から目鼻にかけて症状が出やすいとされています

頭皮の痛みが強いときの対処法

頭皮の痛みが強いときの対処法

日常生活の改善だけではカバーしきれない頭皮の強い痛みには、以下の対処法が有効です。

市販薬で痛みを緩和する
医療機関を受診する

それぞれ詳しく紹介していきます。

市販薬で痛みを緩和する

(出典:(32)接触皮膚炎診療ガイドライン 2020) (出典:(33)日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン2019)

頭皮の痛みは原因に合った市販薬で緩和が可能です

接触皮膚炎が原因で頭皮が痛い場合には、ステロイドの外用薬や抗ヒスタミン薬による治療が有効とされています。

マラセチア毛包炎の場合には、抗真菌薬の外用薬が効果的だと考えられています。

ただし薬の選択を誤ると、かえって症状が悪化する可能性がある点には注意が必要です。たとえば抗菌薬や非ステロイド系消炎薬、ステロイド外用薬などにより、接触皮膚炎が起きた事例が報告されています。痛みの原因や体質に合った薬を選ぶようにしましょう。

医療機関を受診する

頭皮の痛みが気になる場合には、医療機関の受診を検討するのもひとつの方法です。医師の診察を受ければ、痛みの原因を特定したうえで、より効果的な治療が期待できます。

頭皮が痛いときの病院に行く目安

頭皮が痛いときの病院に行く目安

(出典:(34)MSDマニュアルプロフェッショナル版 帯状疱疹) (出典:(35)接触皮膚炎診療ガイドライン 2020)

帯状疱疹が疑われる頭皮の痛みがある場合、発疹が出てから3日以内に受診してください。3日を過ぎると治療薬が効かなくなる可能性があります。

また接触皮膚炎が疑われる場合、痛みの原因物質を取り除いたうえで市販薬による治療を2週間続けても症状が改善しないときには、医療機関の受診を検討しましょう

接触皮膚炎は原因を特定して排除しない限り、治療薬による効果は十分に得られません。自分では気づきにくいものが原因になっていたり、場合によっては薬自体が原因になっていたりするケースもあります。原因がわからない場合も、医師の診察を受けるようにしましょう。

その他の病気でも、以下に当てはまるようなら早めの受診をおすすめします。

日に日に症状が悪化している
日常生活に支障が出ている
激痛がある

何科を受診するといいのか

ほとんどの場合、まずは皮膚科を受診するとよいでしょう。この記事で紹介している5つの病気のうち、頭皮神経痛以外は皮膚科で治療を受けられるからです。

頭皮神経痛の場合は、脳神経内科または脳神経外科で治療できる可能性があります。

頭皮の痛みと抜け毛がある場合はAGAやFAGAの可能性も

頭皮の痛みと抜け毛がある場合はAGAやFAGAの可能性も

(出典:(36)頭皮トラブルが毛髪物性に及ぼす影響と植物由来エキスによるその予防) (出典:(37)Scalp Microbiome and Sebum Composition in Japanese Male Individuals with and without Androgenetic Alopecia)

頭皮の痛みとともに抜け毛や薄毛が気になる場合には、AGAやFAGAをはじめとした脱毛症が進行している可能性も否定できません。

頭皮トラブルにより炎症が起こると、かゆみや痛みを引き起こすばかりか、健康な毛髪が育ちにくくなり、髪のハリやコシが低下するといわれています。また近年の研究報告では、頭皮に炎症があると脱毛につながりやすく、AGAが進行しやすくなる可能性も指摘されています。

頭皮の痛みと同時に、抜け毛や薄毛の症状が現れている場合には、脱毛症を視野に入れた対策を進めるのが賢明です。

まとめ

頭皮の痛みは、誤ったヘアケア・悪い姿勢といった日常生活上の問題や、接触皮膚炎・帯状疱疹に代表される病気など、さまざまな原因で起こります。

まずはシャンプーや紫外線の影響、ストレスや栄養バランスなど、日常生活を見直すことが大切です。また必要に応じて、市販薬や病院での治療も視野に入れましょう。

記事の内容を参考に、ぜひ自分に合った対処法を実践してみてください。

監修者紹介
佐藤 明男 医師
東京メモリアルクリニック理事長
佐藤明男
■ プロフィール
1957年新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。
1998年、厚生省(当時) 高度先進医療推進事業でオックスフォード大学医学部客員研究員として英国に国費留学し、帰国後、東京メモリアルクリニック・平山副院長を経て院長に就任。医療法人TMC理事長を兼任。これまで10,000人を超えるAGA(男性型脱毛症)患者を治療してきた実績を持つ、頭髪治療の第一人者。
■論文・出版情報
2007年 『医療的育毛革命』
2009年 『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』
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