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「最近髪質が変わった気がする」「いつも通りのヘアセットなのにいまいちボリュームが出ない」など髪に違和感がある場合、髪が細くなっているかもしれません。
もともと髪が細いケースもあれば、以前は太かった髪が細くなったケースもあります。いずれの場合も「薄毛につながるのではないか」と不安を抱く方も少なくないようです。
この記事では男性の髪の毛を太くする方法や、髪が細くなる原因について解説します。
目次
成人男性の一般的な髪の太さ
(出典(1):頭髪横断面にみられる年令差と性差について)
髪の断面は円、または楕円です。太さは年齢や性別により異なります。
男性の場合、生まれた直後は長径0.084mm・短径0.07mm。成長とともに髪が太くなり、長径は成人前後で0.118mm、短径は15~17歳にピークを迎え0.088mmまで成長します。しかしその後は減少の一途をたどり、70歳をすぎると長径0.081mm・短径0.066mmと出生直後よりも細くなるとされています。
なお女性は成人前後までは男性よりも細い傾向にありますが、22歳を境に逆転して女性の方が男性より太い傾向に変化します。ピーク後の減少の推移も女性は男性より穏やかです。
髪が細い人・太い人の特徴と見分け方
髪が細い人と太い人では髪質や見た目に違いが生まれます。それぞれの特徴と見分け方を見ていきましょう。
髪が細い人の主な特徴
髪が細い人の主な特徴は以下のとおりです。
- 髪質がやわらかくハリや弾力も少ない。いわゆる「猫っ毛」と呼ばれる髪質も当てはまる
- 毛量に対してボリュームが少なく見えてしまうことがある
- ヘアセットをしても、時間が経つと皮脂や整髪料の重さでペタッとしてしまう
- 地肌が見えやすく、薄毛に思われがちな傾向にある
- 髪にハリやコシが少ない分、クセがつきやすい
髪が太い人の主な特徴
髪が太い人の主な特徴は以下のとおりです。
- 髪質が硬く、ハリやコシがしっかりある
- ヘアスタイルにボリュームが出やすく、毛量が多く見える
- 「髪がまとまりにくくセットしにくい」という悩みが多い
- 地肌が隠れやすいため、薄毛に見えにくい
- 髪が太くハリがあるため、クセがつきにくい傾向にある
男性は髪が細いと薄毛になりやすいのか?
(出典(2):老化と毛髪変化) (出典(3):男性型脱毛――その特性 と未来像)髪の毛が細い・やわらかい人は薄毛になりやすいというイメージがあるかもしれませんが、生来の髪質が薄毛・脱毛に関連する明確な根拠は確認されていません。
しかし、誰でも加齢とともに髪が細く変化するため、結果として薄毛につながることはあるでしょう。さらに男性の場合は、男性ホルモンの影響で前頭部から頭頂部にかけての頭髪がやわらかくなる「軟毛化」が起きることもあります。
とくに男性型脱毛の初期段階で髪の軟毛化が進んでいるケースでは、髪の本数が変わらないまま、毛を作り出す毛包が小さくなっているとされています。そのため髪が急に細くなったと感じる場合には注意が必要です。
以上のことからも髪が細いため薄毛になるのではなく、薄毛のはじまりに髪が細くなってしまうことがわかります。薄毛に早い段階で対処するためには、自身の髪質や髪の太さの変化にいち早く気付くことが重要だといえるでしょう。
髪が細くなる原因5つ
髪が細くなる原因には主に以下の5つが挙げられます。
- 加齢
- 男性ホルモン
- 生活習慣
- ストレス
- 間違ったヘアケア
それぞれについて次から詳しく見ていきましょう。
加齢
(出典(4):頭髪横断面にみられる年令差と性差について) (出典(5):老化と毛髪変化)まず挙げられるのが加齢です。
先述のとおり髪は幼少期には細くやわらかい毛質で、成長に伴い太くなり10代後半にピークを迎えます。その後は年齢が上がるにつれて細くやわららかくなり、70代には出生直後よりも長径・短径ともに細くなることがわかっています。
加齢による髪質の変化は個人差があるものの、性別を問わず誰にでも起こりえる現象です。
男性ホルモン
(出典(6):男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)男性ホルモンによる影響も、髪が細くなる原因のひとつです。男性ホルモンが毛を作り出す毛乳頭細胞に入ることで、毛の生産を抑制する物質に変化するというのが大まかな仕組みです。髪が細くなるだけでなく、軟毛化や脱毛といった症状が見られることもあります。
男性ホルモンによる軟毛化は全年齢の男性で約30%、平均で20代後半から30歳前後からはじまり、40代で完成するとされています。なお男性ホルモンによる軟毛化や薄毛・脱毛は男性だけではなく、女性にも起こりえる変化です。
男性ホルモンによる薄毛・脱毛は治療対象であり、各機関から病態や治療方法についてさまざまな研究結果が報告されています。
生活習慣
(出典(7):髪の健康を考える-美しい髪で過ごすには-) (出典(8):睡眠時間と成長ホルモンの分泌量) (出典(9):走査型電子顕微鏡観察により明らかになった毛髪の損傷形態と栄養状態との関連)生活習慣の乱れもまた、髪の生育に悪影響を与えます。
たとえば睡眠は、体の細胞を作る成長ホルモンと大きく関係しています。睡眠時間が足りなかったり睡眠の質が悪かったりすると、成長ホルモンの分泌が悪化してしまうので注意が必要です。
また毎日の食事も重要です。健康な髪を育てるためには、髪の成分の大半を占めるたんぱく質をはじめ、髪の成長に重要な栄養素をとらなければなりません。食物繊維が足りなかったり、脂質が多かったりする食事は髪質に悪影響であることがわかっています。
ストレス
(出典(10):画像解析によるマウスの体毛成長の評価) (出典(11):ストレスが円形脱毛症の病態に及ぼす影響についての科学的研究)仕事や対人関係などのストレスもまた、髪が細くなったり薄毛・脱毛になったりする原因になり得ます。
ストレスを受けた体にはさまざまな反応を示すことがわかっており、そのひとつに体毛成長の遅れがあります。ストレスを受けた体が交感神経や副腎皮質系を活性化し、体毛の成長サイクルを抑制する物質が分泌されるのが大きな理由です。
さらに後天的な脱毛症のなかで発生頻度が高い円形脱毛症も、ストレスが大きく関わっていると考えられています。
間違ったヘアケア
(出典(12):髪の健康を考える-美しい髪で過ごすには-) (出典(13):低刺激性プロトタイプシャンプーの頭部皮膚疾患患者における使用評価)髪を守るためにも日々のヘアケアは重要ですが、方法を間違えると逆効果になる恐れもあります。
皮脂の分泌が活発で新陳代謝がさかんな頭皮は、体毛が密集していることもあいまって汚れやすい環境です。頭皮を清浄に保つためには毎日のシャンプーが大切ですが、このときシャンプーの成分が肌に合わなかったり、汚れがしっかりと洗い流せていなかったりすると頭皮に悪影響を与えてしまうこともあります。
また洗いすぎで髪や頭皮を傷めてしまうケースもあるので注意しましょう。
生まれつき細い髪を太くすることはできる?
髪質や髪の太さには個人差があり、なかには生まれつき髪が細い人もいます。もともと細い髪を太くする有効な方法は、残念ながら報告されていません。
しかし次の項で紹介する髪へのアプローチ方法を実践することで、健やかな頭皮環境や髪質を守ることはできるでしょう。
髪を太くするための方法5選
加齢や生活習慣などさまざまな理由で細くなってしまった髪は、原因にアプローチすることで改善できることもあります。髪の太さや髪質を改善する取り組みは、ひいては薄毛や脱毛の予防にもつながるでしょう。
ここからは髪の太さや髪質を改善するおすすめの方法を5つ紹介します。
- 食生活を改善する
- 有酸素運動の習慣をつける
- ストレスへの対処法を身につける
- 適切なヘアケアを行う
- AGA(男性型脱毛症)治療を受ける
食生活を改善する
(出典(14):走査型電子顕微鏡観察により明らかになった毛髪の損傷形態と栄養状態との関連)まず挙げられるのが食生活の改善です。健康な髪の維持には、栄養バランスのいい食事が欠かせません。
食事によって得た栄養は、血液によって体のさまざまな部分に送り届けられます。髪も例外ではなく、毛根の周囲にある毛細血管によって髪に必要な栄養が届く仕組みです。
摂取する栄養が偏っていたり不足したりしていると、髪の成長に悪影響を及ぼすことがわかっています。とくに脂質やコレステロールの摂取量が高い食事は血中の脂質レベルを上げ、全身の血行を悪化させます。同じく頭皮の血行も悪くなるため、健康的な髪ができにくくなってしまうのです。
健康的な太い髪を取り戻すためには、普段の食事内容を見直し、バランスよく栄養を摂取できるように心がけましょう。
有酸素運動の習慣をつける
(出典(15):顕微鏡血流観察による有酸素運動前後の毛細血管血流速度の定量) (出典(16):ホソカワミクロンが提唱する内外育毛ケア理論)髪の太さや髪質改善には有酸素運動もおすすめです。髪への栄養は毛根周辺に張りめぐらされた毛細血管によって届けられます。
とくに髪を作り出す毛乳頭周辺の毛細血管は、髪に必要な栄養を供給する唯一の経路であり、体の中でも最末端にあります。
有酸素運動は毛細血管の血流を改善することがわかっているため、頭皮の血行を向上するためにも効果的な手段です。水泳やウォーキング、ジョギング、ダンス、サイクリングなど、自分に合った有酸素運動を習慣づけてみましょう。
ストレスへの対処方法を身につける
(出典(17):画像解析によるマウスの体毛成長の評価) (出典(18): 勤労者のストレス対処行動と職業性ストレスとの関連)ストレスへの対処方法を身につけることも大切です。
先述のとおりストレスを感じた体からは、体毛の成長を抑制する物質が分泌されることがわかっています。ストレスへの対処方法としては、ストレスの原因から離れることが考えられますが、日常生活を送る上では避けることが難しいケースも多々あるでしょう。
どうしてもストレスを受けることを避けられない場合は、受けたストレスを解消する方法を考えてみてください。友人・家族との対話や運動、音楽・映画鑑賞などの趣味、睡眠など、さまざまな対処方法を実践することで、受けたストレスを緩和できます。
自分なりのストレスへの対処方法をもつことは、髪質改善などヘアケアにもつながります。
適切なヘアケアを行う
(出典(19):髪の健康を考える-美しい髪で過ごすには-) (出典(20):低刺激性プロトタイプシャンプーの頭部皮膚疾患患者における使用評価) (出典(21):地肌マッサージの頭皮への作用)自分に合った適切なヘアケアができているか見直すこともおすすめです。
自分の肌質に合うシャンプーや整髪料を使えば、頭皮や髪のトラブルは避けられます。肌への刺激が気になる方には、保湿力の高い低刺激性のシャンプーもおすすめです。つい頭皮をごしごしと洗いすぎてしまう方は、洗い方も見直してみてください。
また頭皮の血行を改善するマッサージなど、育毛への有効性が認められたケア方法も積極的に取り入れてみましょう。
AGA(男性型脱毛症)治療を受ける
(出典(22):男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版)AGA治療を受けるのもひとつの方法です。近年ではAGAについての研究が進み、日本でも効果的な薬が認可されるようになりました。
AGAの診断ではおでこの生え際や頭頂部などを観察します。それらの部分で頭髪が細くやわらかくなっている場合はAGAを疑ってみてもよいかもしれません。
AGAでは早い段階での診断が提唱されているため、明らかな脱毛がない方でも、髪質や毛量の変化が気になった時点で受診してみるのがおすすめです。
まとめ
髪の毛の太さには個人差があるものの、加齢や生活習慣、ストレス、AGA(男性型脱毛症)などさまざまな原因がもとで細くやわらかくなってしまうことも少なくありません。
髪の太さや髪質の変化が気になる場合は、まず記事内で紹介した改善方法を実践してみましょう。
- 1).4).人類學雜誌/75巻 (1967) 5号 p.224-229
- 2).5).日本臨床皮膚科医会雑誌/24巻 (2007) 3号 p.221-228
- 3).順天堂医学/37巻 (1991-1992) 4号p.572-586
- 6).22).日本皮膚科学会(2017)
- 7).12).19).順天堂醫事雑誌/59巻(2013)4号 p.327-330
- 8).週刊日本医事新報 4684号 (2014) p.92
- 9).14).金城学院大学大学院人間生活学研究科論集/14巻(2014) p.13-20
- 10).17).川崎医療福祉学会誌/28巻(2018) p.125-133
- 11).大阪市立大学/科学研究費助成事業 研究結果報告書 (2018-2021)
- 13).20).日本香粧品学会誌/41巻(2017)1号 p.15-22
- 15).日本温泉気候物理医学会雑誌/78巻(2014-2015)4号 p.353-362
- 16).粉砕/61巻(2018) p.84-87
- 18).三重看護学誌/10巻(2008) p.89-92
- 21).日本化粧品技術者会誌/48巻(2014)2号 p.97-103