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「最近頭がかゆくて、薄毛にならないか心配」
「フケが増えるのはかゆみと関係があるのかな?」
頭がかゆくなったりフケが増えたり、頭皮に異常を感じて不安になっている方もいるでしょう。何も対処せずに放置していると、抜け毛やニキビなどのリスクも高くなります。
原因や対処法を知れば、頭皮のトラブルを未然に防ぐことが可能です。そこでこの記事では、頭がかゆくなる原因や対処法について解説します。頭のかゆみで悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
頭がかゆいときに考えられる原因は?
頭がかゆいときは、頭皮に炎症が起きている場合が少なくありません。頭皮に炎症が起きる疾患としては、おもに以下の4つが挙げられます。
以下で詳しく解説します。
脂漏性皮膚炎
(出典:(1)脂漏性皮膚炎 —臨床症状と各種外用剤の治療効果—)脂漏性皮膚炎の特徴的な症状は、皮膚の赤みやフケの発生です。炎症を起こすことでターンオーバーが乱れてしまい、古い角質となったフケが落ちてかゆみの原因になります。とくに皮脂の分泌が多い部分を中心に、症状が出やすいです。
脂漏性皮膚炎の主な原因は、常に人の皮膚に存在するマラセチア菌という常在菌です。マラセチア菌が増殖してしまい、炎症を引き起こすと考えられています。マラセチア菌はカビ菌の一種で、皮脂が過剰に分泌されると増殖する特徴があります。
皮脂欠乏性皮膚炎
(出典:(2)アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2018)皮脂は多すぎると脂漏性皮膚炎の原因になりますが、一方で少なすぎても頭皮が乾燥して湿疹が生じることがあります。この症状は皮脂欠乏性皮膚炎と呼ばれます。
適度な皮脂は頭の水分をキープし、潤いを保つ役割があります。そのため洗浄力の強いシャンプーなどで必要な皮脂を洗い流してしまうと、頭皮は水分や潤いを維持できません。
潤いがなくなった頭皮はターンオーバーの周期が早くなり、新しい角質まではがれ落ちてしまいます。結果として皮膚のバリア機能が低下して、かゆみを感じやすくなったり炎症を起こしやすくなったりします。
接触皮膚炎
(出典:(3)接触皮膚炎診療ガイドライン 2020)接触皮膚炎とは肌に触れた刺激物質が皮膚内に入りこみ、細胞を刺激して炎症を起こしている状態です。大きく分けて「刺激性接触皮膚炎」と「アレルギー性接触皮膚炎」の2つにに分類されます。
原因物質は日常生活でも使われているヘアケア商品や化粧品、指輪やネックレスといった金属系のアクセサリーなどです。その他にも衣類や洗剤、動物など、さまざまなものが原因になりえます。
接触皮膚炎は直接触れた箇所に症状が現れるのが特徴です。赤みやかゆみ、水ぶくれなどの症状を引き起こします。接触性皮膚炎を治療する際には、反応を起こしている物質を特定し、原因物質に触れないことが大切です。
アレルギー・アトピー性皮膚炎
(出典:(4)アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2018)
アレルギーやアトピー性皮膚炎は、接触した物質に対してアレルギー反応を起こす疾患で、赤みや湿疹、かゆみなどの症状が現れます。
慢性的に良化したり悪化したりを交互に繰り返すのが特徴で、肌が乾燥している状態や腫れてジュクジュクとした状態など、症状はさまざまです。
アトピー性皮膚炎は体質や肌の乾燥によるバリア機能の異常など、複数の要因が重なり合って症状を引き起こすと考えられています。
頭がかゆい状態を放置するとどうなる?リスクはある?
頭がかゆい状態を放置すると、以下のような頭皮トラブルのリスクがあります。
それぞれの頭皮トラブルについて、以下で詳しく解説します。
薄毛・抜け毛の原因になる
(出典:(5)頭皮トラブルが毛髪物性に及ぼす影響と植物由来エキスによるその予防)(出典:(6)ヘアケアの科学)
頭皮にかゆみがある場合、頭皮が炎症を起こしていたり皮脂の分泌が過剰になっていることが多いです。
炎症は頭皮環境を悪化させるため、髪の毛の強度が弱くなり抜けやすくなります。また皮脂の分泌増加も毛根細胞の活性低下につながるため、薄毛・抜け毛の原因になります。
薄毛・抜け毛の原因はさまざまですが、頭皮環境を清潔に保つことが薄毛・抜け毛予防にもつながるでしょう。
フケが発生する
(出典:(7)フケ抑制剤の評価と開発に関する研究) (出典:(8)ヘアケアの科学)(出典:(9)Malasseziaと脂漏性皮膚炎・アトピー性皮膚炎)
頭皮のかゆみを放置すると、フケの増加につながることもあります。さらにフケは頭皮を刺激してかゆみを増大させるため、頭皮環境がより悪化するという悪循環に陥る恐れもあるでしょう。
フケは主に乾性フケと脂性フケに分類され、発生する原因が異なります。
乾性フケは頭皮が乾燥している状態で発生するフケです。乾燥した頭皮が刺激を受けやすくなるため、未熟な角質がはがれてしまいフケとなります。洗浄力が強いシャンプーは、必要な皮脂まで洗い流されてしまうので、頭皮の乾燥が気になる方はやさしい洗浄力の製品や保湿成分が配合された製品を選びましょう。
脂性フケは黄白色でベトベトしているのが特徴です。皮脂が必要以上に分泌している状態で、皮脂を好むマラセチア菌が増殖し炎症を起こします。
フケは頭皮を刺激するためかゆみを誘発し、フケが発生してしまう悪循環に陥りやすいので、しっかりと対処しましょう。
ニキビ・かさぶたができる
(出典:(10)ニキビの発症メカニズム,治療,予防)
頭皮環境が悪化して皮脂が毛穴に詰まると、ニキビができやすくなります。詰まった皮脂に増殖した痤瘡桿菌が、ニキビの炎症を引き起こす原因です。
またニキビの炎症が治まった後に、かさぶたやクレーター跡が残ったりすることもあります。
頭がかゆいときにできる対処法とポイント
頭がかゆくなってしまった場合は、症状や原因に合った対処法を試してみましょう。
ここでは頭がかゆくなってしまったときの対処法について、7つのポイントを解説します。
ぜひ参考にしてみてください。
自分に合ったシャンプーを選ぶ
(出典:(11)フケ症に対する0.75%硝酸ミコナゾール配合シャンプーの有用性の検討-シャンプー基剤を対照とした二重盲検比較試験) (出典:(12)毛髪・頭皮にやさしい洗浄技術)(出典:(13)次世代ニーズを予測するための解析手法の研究 ~シャンプー開発を例として~)
頭がかゆくなる原因のひとつに、シャンプーが合っていないことが挙げられます。シャンプーを選ぶ際は洗浄成分などを確認し、自分の肌質に合ったものを選びましょう。
たとえば頭皮を清潔に保つために洗浄力の強いシャンプーを使うと、必要な皮脂まで流してしまいます。
その結果として、頭皮の乾燥やバリア機能の低下が起こり、刺激を感じやすい状態になります。
頭皮が乾燥しやすい方は、アミノ系シャンプーなどの洗浄力が穏やかな成分のものを選ぶとよいでしょう。
シャンプーのやり方を見なおす
(出典:(14)洗浄料とその作用)
シャンプーのやり方を見なおすことで、かゆみを抑えられる場合があります。
シャンプーをつける前には、すすぎ洗いを丹念に行いましょう。最初にある程度汚れや皮脂を洗い流すことで、少量のシャンプーでも十分に泡立つようになり、洗浄剤の刺激が少なくなります。
また頭皮を洗う際には、指の腹で頭皮をマッサージするようにして洗いましょう。爪を立ててゴシゴシと洗うのは、頭皮が傷つく原因になるので避けてください。
正しくドライヤーを使用する
(出典:(15)毛髪にかかる負担を軽減するための吸引式ヘアドライヤーの開発)(出典:(16)入院患者の頭髪および頭皮のブドウ球菌の汚染状況と洗髪による汚染除去の効果)
正しくドライヤーを使えていないと頭皮が乾燥してかゆみの原因になります。
頭皮とドライヤーの距離が近すぎる、ドライヤーの温度が高すぎる、一定の場所に当たり続けているといったことがないように、ドライヤーの使い方を見直してみましょう。
また自然乾燥や髪を半乾きのまま放置している人も要注意です。湿った髪や頭皮には菌が繁殖しやすく、炎症を起こす原因になります。
ドライヤーを使用する前はしっかりとタオルで水分をふき取り、頭皮から20cm~30cmは離して使用しましょう。
頭皮を保湿する
頭皮は乾燥するとかゆみを引き起こすため、しっかりと保湿をしましょう。頭皮を保湿するためのローションやオイル・美容液など、さまざまなヘアケア商品が発売されています。
事前に成分をチェックした上で、使用方法や頻度を守って使用しましょう。
肌を清潔に保つ
(出典:(17)低刺激性プロトタイプシャンプーの頭部皮膚疾患患者における使用評価―頭部皮膚疾患患者を対象とした臨床試験―毛穴に汚れが詰まったり皮脂が多すぎたりすると炎症を起こしやすいため、頭皮は常に清潔に保つことが重要です。
脂漏性皮膚炎などで皮脂の分泌が多い方は、シャンプーで余分な皮脂をしっかりと洗い落とし、清潔に保つことでかゆみを改善できます。
かきむしらない
(出典:(18)長引くかゆみ、何回も引っ掻くと神経で増えるタンパク質が原因!―かゆみ治療薬開発への応用に期待―)
頭がかゆくなると、無意識のうちにかきむしってしまう方も多いでしょう。頭をかきむしることは、かゆみを長引かせる原因になることが知られています。
頭をかきむしると、皮膚と脊髄をつなぐ感覚神経でNPTX2というタンパク質が増加し、かゆみの伝達神経に作用するために慢性的なかゆみが起こると考えられています。
かきむしりによる頭皮の傷口にも注意しなければなりません。傷口から細菌が入り、炎症が悪化してしまう恐れがあるからです。
頭をかかないように意識することが第一ですが、うっかりかいてしまっても傷口を作らないよう、爪を切っておくなどの工夫も必要です。
生活習慣を整える
(出典:(19)アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2018)(出典:(20)「日本人の食事摂取基準(2015年版)」 策定検討会報告書)
睡眠不足やストレスで頭皮のターンオーバーが乱れると、頭皮の炎症や抜け毛につながります。適度な睡眠をとってストレスは上手に発散し、健康的な生活を心掛けましょう。
食生活も健康な頭皮環境のために意識したいポイントです。栄養バランスの良い食事を意識しましょう。
とくにサケなどの魚類や豚肉に含まれるビタミンB2は、不足すると脂漏性皮膚炎などの原因になることがあります。
頭のかゆみに対処する際の注意点
頭のかゆみの原因はそれぞれ異なるので、原因や症状に合った対処法を試すようにしましょう。市販薬を購入する際は、店舗の薬剤師などに相談するのも良い方法です。
また頭皮に傷があるときは、保湿ローションなどの化粧品の使用は控えた方が良いでしょう。それらを傷口に塗ることで、頭皮のかゆみや炎症が悪化してしまう恐れがあります。
ほかにも間違った対処を続けることで、症状が悪化してしまうかもしれません。もし症状が長引いたり悪化してしまったりする場合は、専門医を受診することをおすすめします。
まとめ
頭がかゆくなる原因は皮脂の出すぎや乾燥など、人によって異なります。
とくにかゆみとフケには相互関係があり、かゆみがフケを増殖させ、フケが刺激となりかゆみが増してしまいます。
頭皮環境は一度悪くなると悪循環に陥りやすいです。そのため初期の段階で、しっかりと対処することが重要です。
もしかゆみの症状がある方は、今回取り上げた「自分に合ったシャンプーに変える」や「正しいドライヤーの方法」などを試してみてはいかがでしょうか。
- 1).日本医真菌学会雑誌 44巻 (2003) 2号, p.77-80
- 2).4).19).日本皮膚科学会雑誌 128巻 (2018) 12号 p. 2431-2502
- 3).日本皮膚科学会雑誌 130巻 (2020) 4号 p. 523-567
- 5).日本化粧品技術者会誌 52巻1号, 16-23, 2018
- 6).8).繊維製品消費科学 28巻 (1987) 6号 p. 219-226
- 7).日本化粧品技術者会誌 27巻 (1993) 3号 p.394-408
- 9).日本医真菌学会雑誌 46巻 (2005) 3号 p.163-167
- 10).日本香粧品学会誌 40巻 (2016) 1号,p.12-19
- 11).Jpn. J. Med. Mycol. Vol. 38, 87-97, 1997 ISSN 0916-4804
- 12).日本化粧品技術者会誌 47巻 (2013) 1号 p.3-8
- 13).情報の科学と技術 67巻 (2017) 4号 p.194-201
- 14).日本香粧品学会誌 Vol. 42, No. 4, pp. 270–279 (2018)
- 15).科学・技術研究 2巻 (2013) 1号,p.75-78
- 16).愛知県立大学看護学部紀要vol.21 (2015) p.21-29
- 17).日本化粧品技術者会誌 41巻 (2017) 1号 p.15-22
- 18).国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 プレスリリース
- 20).厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書