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頭皮のニキビに悩んでいる人もいるのではないでしょうか。頭皮ニキビは触れると痛みがあるほか、悪化することもあるので、ニキビができる原因を知って改善・予防しておきたいところです。
この記事では、頭皮にニキビができる原因と具体的な改善・予防方法を解説します。
目次
頭皮にニキビができる原因は?
(出典:(1)化粧品製剤におけるナノ粒子の活用)
頭皮のニキビは、毛穴に皮脂がつまりニキビの元となるアクネ菌の増殖によって引き起こります。
一般的な顔のニキビは思春期にできやすいですが、頭皮の場合は30〜40代の男性に多く見られるのが特徴です。
頭皮のニキビはかゆみや痛みを伴うので、掻いたり触れたりすると悪化する可能性があります。
頭皮にニキビができる主な原因は、以下のとおりです。
皮脂の過剰分泌
(出典:(2)化粧品製剤におけるナノ粒子の活用)
皮脂が過剰分泌されることで、頭皮にニキビができることがあります。
ニキビの原因であるアクネ菌は皮脂を餌とするため、皮脂が過剰分泌されるとアクネ菌が増殖するのです。
過剰分泌は睡眠不足や乱れた食生活によって引き起こされるので、規則正しい生活を送るようにしましょう。
ターンオーバーの乱れ
(出典:(3)若年層の額に多く見られる「ざらつき」の実態調査とスキンケアによる改善)
ターンオーバー (表皮細胞の生まれ変わり) の乱れは、頭皮ニキビをつくりだす原因の1つです。
規則正しいサイクルであれば、適度な水分を保ち弾力性のある状態をキープできますが、一度乱れると頭皮の角質が剥がれ落ちずに厚くなり皮脂が毛穴に詰まってしまいます。
ターンオーバーの乱れは頭皮の衛生状態や生活習慣と密接に関係しているため、皮脂をしっかりと洗浄して頭皮を清潔に保つことが大切です。
汗による蒸れ
(出典:(4)洗浄料とその作用)
汗により頭皮が蒸れることでも、ニキビはできやすくなります。蒸れると頭皮でアクネ菌が増殖してしまうからです。
汗をかいたらそのまま放置せずに、シャワーで洗い流すようにしましょう。
睡眠不足・睡眠環境
(出典:(5)第3章 主な医薬品とその作用) (出典:(6)大学生における睡眠の質と関連する生活習慣と精神的健康) (出典:(7)寝具と睡眠)睡眠不足の生活を続けると頭皮にニキビができてしまいます。
良質な睡眠をとらなければ、ターンオーバーに必要な成長ホルモンが不足してしまうからです。忙しい状況でも、睡眠時間は十分に確保するように心がけましょう。
また睡眠時間だけでなく、睡眠の質も体調に影響すると考えられています。
たとえば生活リズムや食生活の乱れは、睡眠の問題と相関関係にあることがわかっています。
さらに就寝前のカフェイン摂取や飲酒・喫煙、激しい運動やメールチェックなどの行動や、寝室の温度や光環境、音や寝具など睡眠環境も、睡眠の質を左右する重要な要素です。
栄養バランスの乱れ・不足
(出典:(8)ニキビの発症メカニズム,治療,予防)頭皮ニキビの原因には栄養バランスの乱れや栄養不足も考えられます。
「特定の食品を食べるとニキビができる」という科学的な裏付けはまだありません。しかし肌の状態を改善する際には、栄養バランスの見直しが推奨されています。
肉や魚などのタンパク源や良質な脂、野菜、果物、ごはんやパンなどの炭水化物を過不足なく摂れているかどうか、日々の食事をふり返ってみましょう。
ストレス
(出典:(9)ニキビと心身医学)ストレスも頭皮ニキビの一因です。
ストレス要因には学校や職場の人間関係やプレッシャー、家庭内の不和、自己イメージの低さや外見へのこだわりなどさまざまなものがあります。
いずれも日常的に受けるストレスであり、ニキビを悪化させる原因でもあることから、ストレス発散ができているかどうかも頭皮環境に影響するといえるでしょう。
紫外線
(出典:(10)皮膚常在菌の皮膚状態に与える影響) (出典:(11)肌の生化学的パラメーターと肌状態およびスキンケア化粧品の有用性評価) (出典:(12)若年層の額に多く見られる「ざらつき」の実態調査とスキンケアによる改善)紫外線を浴び続けることが肌への悪影響となることはよく知られています。皮膚は常に皮脂を分泌して肌を守っていますが、紫外線はこの皮脂を酸化させてしまうのです。
皮脂が酸化すると、過酸化脂質という物質に変わります。過酸化脂質はさまざまな皮膚疾患の一因であることが指摘されており、肌のターンオーバーの乱れを引き起こすことで間接的にニキビの発生につながります。
ニキビ以外にも!気を付けたい頭皮トラブル
ニキビだと思っていても、実はそれ以外の状態になっている場合があります。ニキビ以外で考えられるできものは、以下などです。
不安があれば、早めに皮膚科を受診することをおすすめします。
脂漏性皮膚炎
(出典:(13)マラセチア関連疾患)(出典:(14)脂漏性皮膚炎)
脂漏性皮膚炎は、皮膚に常在するカビが原因となって引き起こされる皮膚疾患です。主な症状としては、湿疹や脂っぽいフケが出るなどがあります。
マラセチア菌が要因ともいわれており、頭皮だけでなく顔のTゾーンなど皮脂の分泌量が多い箇所に出やすいのが特徴です。
脂漏性皮膚炎は悪化すると硬いかさぶたができ、頭皮だけでなく全身にも症状が出てしまうことがあります。
マラセチア菌に効果が期待できる塗り薬や、炎症を抑える薬を処方するといったことが基本的な対処法です。
毛嚢炎 (もうのうえん)
毛嚢炎は毛根を包んでいる毛嚢 (もうのう) に雑菌が入り込んで、炎症が起こった状態のことをいいます。赤みを帯びた湿疹や膿を持つのが特徴です。
ストレスをためない生活や食生活の見直しによってある程度の改善が見込めます。症状が続く場合は、病院で抗生剤の飲み薬や塗り薬を処方してもらうとよいでしょう。
頭皮にニキビができたときにやってはいけないこと
頭皮にニキビができたときに以下のことをするのはNGです。
●シャンプーのすすぎ残し
●髪を自然乾燥させる
●ニキビをつぶす
●帽子を長時間かぶる
シャンプーのすすぎ残し
シャンプーのすすぎ残しには注意しましょう。すすぎが不十分だと毛穴にシャンプーの成分が残ってアクネ菌の栄養源となり、ニキビを悪化させてしまうからです。
シャンプーを使用した後に90秒ほどお湯ですすぐと、しっかりと洗い流せます。
シャンプーをしすぎない
(出典:(15)髪の健康を考える-美しい髪で過ごすには-)シャンプーのしすぎも頭皮環境によくない場合があります。
汚れや皮脂が溜まることは頭皮にとって悪影響ですが、洗いすぎも髪や頭皮を傷めてしまうこともあるので注意が必要です。自分の肌質に応じた適切な頻度でシャンプーを行いましょう。
髪を自然乾燥させる
髪を自然乾燥させるのはNGです。アクネ菌は湿度の高い状態で繁殖しやすいため、シャンプーの後に髪を自然乾燥させていると頭皮ニキビのリスクを高めてしまいます。
入浴後は必ずドライヤーで髪を乾かしましょう。
ニキビをつぶす
頭皮にできたニキビは、つぶさないようにしましょう。無理やりニキビをつぶすと炎症が周囲に広がってしまい、完治まで時間がかかるからです。
目立つ場所でないからといって無理につぶすと、ひどいときはクレーターのような跡が残ってしまいます。
帽子を長時間かぶる
頭皮にニキビができているとき、帽子を長時間かぶるのは良くありません。帽子の着用は紫外線対策に有効ですが、長時間かぶると蒸れやすく、アクネ菌が繁殖しやすい環境となってしまいます。
頭皮にニキビができたときの改善・予防法
ここでは、頭皮にニキビができたときの改善・予防法を紹介します。
頭皮環境に合ったシャンプーを使用する
(出典:(16)次世代ニーズを予測するための解析手法の研究 ~シャンプー開発を例として~)
頭皮環境に合ったシャンプーを使用することで、頭皮ニキビの発生を改善・予防できます。自分の頭皮環境に合った洗浄力のシャンプーを選んで、適切な頻度で丁寧に洗髪しましょう。
頭皮ニキビ対策には、皮脂を摂りすぎず頭皮にやさしいスカルプシャンプーがおすすめです。
栄養バランスのとれた食事をする
栄養バランスのとれた食事をとることで頭皮環境を整えられます。栄養のあるものを食べるようにし、血糖値を上げやすい高炭水化物の食品や乳製品は控えめにしたほうがよいです。
また動物性の脂質も、ホルモンバランスの乱れや腸内フローラの乱れにより皮脂が過剰分泌されてしまうので注意しましょう。
なお食事をする時間がとれないときには、サプリメントも効果的です。
枕を清潔にしておく
頭皮環境を整えるため、枕を清潔に保っておきましょう。汗や皮脂や付着した不潔な枕だと、雑菌が繁殖しやすくなります。
枕カバーは最低でも週に2回は洗濯するのがおすすめです。汗をかきやすい夏場なら2日に1回は洗濯するようにしましょう。
UVスプレーを使用する
(出典:(17)洗浄料とその作用)
長時間、屋外にいるときはUVスプレーを使用しましょう。頭皮が紫外線にさらされると頭皮のバリア機能が低下し頭皮が乾燥、やがて皮脂が過剰に分泌されてしまいます。
UVスプレーには頭皮を紫外線を守る効果があるのです。ただしUVスプレーが残ったままだと頭皮に負担がかかりかえって頭皮環境を悪化させるおそれがあるので、入浴時にしっかり洗い落とすことが大切です。
生活習慣を見直す
(出典:(18)大学生における睡眠の質と関連する生活習慣と精神的健康) (出典:(19)寝具と睡眠) (出典:(20)ニキビの発症メカニズム,治療,予防) (出典:(21)髪の健康を考える-美しい髪で過ごすには-)生活習慣の見直しも頭皮や髪の健康を維持するために大切です。睡眠時間は十分にとれているか、良質な睡眠はとれているかをふり返り、入眠前の行動や寝室の環境などを見直しましょう。
またバランスのいい食事がとれているかも重要です。たとえば脂質や糖質ばかりをとりすぎていないか、タンパク質やビタミンもとれているかを再確認しましょう。
ストレス発散方法を知っておくことも大切です。ストレスを過小評価せず、家族や友人、専門家などを積極的に頼り、心のケアをこまめに行いましょう。
これらの生活習慣を見直すことで、健やかな頭皮や髪が育つ環境を整えられます。
帽子をかぶらない
(出典:(22)帽子による日射の遮蔽効果) (出典:(23)にきび(ざ瘡)|MSDマニュアル 家庭版)帽子をかぶらないのもニキビ予防に役立ちます。
ニキビの一因に発汗による蒸れがあるため、帽子をかぶることで頭皮が蒸れて、ニキビの原因になることが考えられます。帽子をかぶる回数を減らすことで、蒸れによる頭皮への悪影響を防げるでしょう。
頭皮の紫外線対策は、日傘など帽子以外の方法がおすすめです。
皮膚科を受診する
既に頭皮にニキビがなかなか治らない場合は、自分で解決しようとせず皮膚科を受診しましょう。自分ではただのニキビだと思っていても、膿痂湿疹 (のうかしっしん) や脂漏性皮膚炎などの可能性があるからです。
また知らずに放置していると薄毛や抜け毛といった頭皮トラブルを引き起こしかねません。
頭皮は顔と違ってピーリングやレーザーの治療が行えないのが特徴です。そのため治療は、抗生剤の飲み薬と塗り薬が中心となります。
頭皮は髪の毛があって薬を塗りにくいため、塗り薬は軟膏よりもローションの処方が一般的です。
頭皮にニキビができないよう日ごろからの予防が大切
頭皮にニキビができないように、日ごろから細菌の繁殖を促さないための予防が大切です。帽子をかぶる時間を減らしたり、シャンプーを正しく使ったりして、できることから予防に努めましょう。
すでに頭皮にニキビができてなかなか治らない場合は、皮膚科を受診することをおすすめします。
- 1). 2). The Micromeritics No.63 (2020) 61-66
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