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フケやかゆみが気になり、頭皮の乾燥対策を検討している人も多いのではないでしょうか。
頭皮の乾燥は放っておくとさまざまな症状を引き起こし、抜け毛や薄毛につながることもあります。
本記事では頭皮が乾燥する原因や対処法、フケやかゆみを抑えるためのセルフケア法などをくわしく解説します。頭皮環境を守るためにも、ぜひ参考にしてみてください。
頭皮が乾燥する原因とは?
頭皮が乾燥する原因は、主に以下の7つです。
それぞれくわしく解説していきます。
頭皮が乾燥肌の場合
もともとの肌質が乾燥肌の場合、頭皮も乾燥しがちです。
お風呂上がりに肌がつっぱる感じがある、空気が乾燥している時期はかゆみを感じたり保湿剤が手放せなかったりするなどの特徴に当てはまる場合は、乾燥肌の可能性があります。
乾燥肌の人は皮脂の分泌量が少ないため、頭皮のつっぱり感やかゆみが気になりやすい体質です。
長時間冷暖房の効いた部屋で過ごす
冷房や暖房が効いた部屋で長時間過ごすと、頭皮が乾燥しやすい状態になるため注意が必要です。
冷房で全身が冷えて血行不良を引き起こし、皮膚の末端まで栄養が届きにくくなるため頭皮が乾燥しやすくなります。体を冷やしすぎない工夫が必要です。
暖房を使用する場合は、部屋の空気が乾燥するため、頭皮の水分も奪われてしまいます。加湿器などを併用して、部屋が乾燥しないように注意をしましょう。
シャンプーのし過ぎ、もしくは刺激が強すぎる
(出典:(1)低刺激性プロトタイプシャンプーの頭部皮膚疾患患者における使用評価 ―頭部皮膚疾患患者を対象とした臨床試験―)過度のシャンプーや刺激の強いシャンプーを使用することは、皮膚のバリア機能を低下させて頭皮を乾燥させる原因につながります。
皮膚のバリア機能とは、水分の蒸発を防ぐことで肌のうるおいを保ち、異物の混入を防いでくれる役割を指します。バリア機能が低下すると皮膚が乾燥し、外的刺激にも敏感になりかゆみを感じやすくなるため注意が必要です。
シャワーの温度が高すぎる
洗髪する際にシャワーの温度が高すぎる場合、必要な皮脂まで落としてしまい頭皮が乾燥してしまうことがあります。
油汚れのひどいフライパンを高温のお湯で洗うとすっきり落とせる反面、手も乾燥しやすくなります。頭皮も同じように、温度の高いシャワーで洗髪すると乾燥を招いてしまうため気をつけましょう。
ドライヤーの当てすぎ、もしくは乾かしきれていない
(出典:(2)入院患者の頭髪および頭皮のブドウ球菌の汚染状況と洗髪による汚染除去の効果)ドライヤーの仕方が間違っている場合、頭皮の乾燥を引き起こすことがあるため注意が必要です。
ドライヤーの熱を頭皮に長時間当てたり、頭皮との距離が近すぎたりすると、頭皮の水分を必要以上奪うことにつながります。
逆に髪の毛や頭皮が湿ったままでいると、湿気により頭皮の雑菌が繁殖し、ターンオーバーが乱れて乾燥を引き起こします。
食生活が乱れている
(出典:(3)体 質 (証) と皮膚生理に関する研究-中医生薬処方の開発-)食生活が乱れると健康な頭皮を保つために必要な栄養が行き届かなくなり、ターンオーバーの乱れから頭皮の乾燥を招きます。
過度なダイエットや偏食、栄養バランスの悪い食事などを続けることで頭皮の健康に大切な栄養素が不足し、乾燥しやすい状態になります。
紫外線の影響を受けている
(出典:(4)皮膚の光老化とその予防に関するコンセンサスステートメント)紫外線は肌の乾燥をはじめ、しわやしみ・くすみ・たるみなどの老化現象をもたらします。顔・腕・脚だけでなく、頭皮も紫外線にさらされることで、影響を受ける可能性があります。
頭皮の乾燥が気になる場合は紫外線の影響も考慮に入れましょう。
頭皮が乾燥するとどんな症状が起きる?
頭皮の乾燥はさまざまな症状につながります。ここでは具体的な症状を紹介します。
かゆみやかさぶた
(出典:(5)ドライスキンとかゆみ) (出典:(6)鱗屑および痂皮中におけるSporolhrix schenckiiの寄生形態(III)症例について)乾燥したひふは敏感で、かゆみを感じやすいです。
不快なかゆみをやわらげようと頭皮を掻いてしまうと、さらにひふが傷ついてかさぶたになるため注意が必要です。かさぶたに細菌が入り込んで繁殖すると、さらに強いかゆみが生じます。
洗髪時も含め、頭皮には爪を立てずにやさしく触れることが大切です。
フケ
(出典:(7)フケ抑制剤の評価と開発に関する研究)頭皮の乾燥はフケを発生させる原因になります。フケには皮脂の過剰分泌が原因の脂性フケと、乾燥が原因の乾性フケがあります。
乾性フケは水分量が少なくパラパラとした粉のようで、白色なのが特徴です。フケとは頭皮の古くなった角質が剥がれ落ちたもので本来は目に見えにくい大きさですが、乾燥によるターンオーバーの乱れにより、目に見える大きさのフケが大量に落ちてくるようになります。
乾性フケは空気が乾燥している季節に発生しやすいですが、過剰な洗髪など皮脂を必要以上に落としすぎてしまう場合にも発生しやすくなります。
抜け毛や薄毛
(出典:(8)ヘアケアの科学) (出典:(9)男性型脱毛 ―その特性 と未来像)頭皮の乾燥は抜け毛や薄毛につながる場合もあります。
乾燥によるかゆみを感じて頭皮を掻きむしってしまうと、物理的な刺激で髪の毛が抜けてしまうかもしれません。さらに頭皮や毛穴に炎症が起こるとヘアサイクルに乱れが生じ、抜け毛や薄毛へとつながります。
男性の薄毛は特定の部位から進行していく特徴があります。とくに薄毛になりやすい部位は、M型の薄毛と呼ばれる前頭部、O型の薄毛と呼ばれる頭頂部です。前頭部と頭頂部が同時に進行する薄毛はU型といいます。
頭皮の乾燥の対処法・予防法は?
頭皮の乾燥はさまざまな症状を引き起こすため、放置することなくきちんとケアすることが大切です。ここでは頭皮の乾燥が気になる際の対処法や予防法を紹介します。
低刺激のシャンプーを選ぶ
(出典:(10)シャンプー) (出典:(11)化粧せっけん及びヘアシャンプーの泡立ちとソフト感)頭皮が乾燥しているときは、ひふが敏感な状態になっています。刺激の強いシャンプーを使うとさらにかゆみや炎症が悪化する恐れがあるため、なるべく低刺激のシャンプーを選んでケアするようにしましょう。
とくに刺激が少ないのはアミノ酸系とベタイン系のシャンプーです。どちらのシャンプーも保湿性が高く、刺激の少ない洗浄成分でやさしく洗えるのが特徴です。
頭皮に優しいシャンプーの使い方
頭皮に負担をかけずに洗髪するポイントは、予洗いとシャンプーの泡立て方です。
まずは予洗いを丁寧に行いましょう。シャンプー前にお湯で十分に頭皮や髪の毛を洗い流すことで汚れの大半を落とせるため、シャンプーが少量で済みます。必要以上の量のシャンプーを使うとすすぎ残しにつながるため注意が必要です。
次にシャンプーを使用する際は、よく泡立ててから髪に馴染ませましょう。泡が髪の毛や頭皮にしっかりと行き渡るため、ムラなく汚れを落とせます。その際は爪を立てたり強い力でゴシゴシとこすらず、指の腹でやさしく洗うようにしましょう。
シャワーの温度設定を高くしすぎない
(出典:(12)アトピー性皮膚炎に対する乾燥肌用入浴剤バスキーナの使用試験)体や髪を清潔に保つために、入浴は欠かせない習慣です。しかし一方でお湯には脱脂効果があるため、乾燥を招きやすいとされています。頭皮の乾燥が気になる方は、熱すぎるお湯を使うことは避けましょう。
ドライヤーにも注意!頭皮の水分を守る乾かし方
洗髪後はすぐにドライヤーで乾かすことが大切ですが、正しい方法で使用しないと頭皮にダメージを与えてしまいます。
頭皮の水分を守る正しい乾かし方のポイントは、次の3点です。
低めの温度設定で乾かすと、頭皮の乾燥や炎症を防げます。
また頭皮は必要以上に風を当てると乾燥するため、髪の毛に風を当てるようにしましょう。髪の毛が乾く過程で頭皮も乾くため、頭皮を集中的に乾かす必要はありません。
さらにドライヤーを常に動かしながら乾かすことも有効な対策です。ドライヤーの熱を同じ場所に当て続けると頭皮の乾燥や炎症を引き起こすため、一箇所に当て続けないように動かしながら使用してください。
乾燥がとくに気になる場合は、ヘアオイルなどの保湿アイテムを活用してもいいでしょう。
頭皮マッサージで血行促進を
(出典:(13)地肌マッサージの頭皮への作用)血行の改善には頭皮マッサージもおすすめです。
頭皮が血行不良の状態では、健康を保つために必要な栄養が行き届かなくなります。頭皮マッサージで血行促進をすることで、頭皮の健康状態も改善されます。
指の腹を頭皮に密着させ、全体を丁寧にマッサージしてみましょう。
バランスの良い食事
頭皮環境を整えるためには、バランスのよい食事を心がけることも大切です。頭皮や髪の毛は毎日の食事から摂取される栄養をもとに作られます。普段から食事の時間や内容が偏っている方は、食生活を見直してみましょう。
下記では頭皮環境を整えるのに効果的な食品を紹介するので、ぜひ意識的に取り入れてみてください。
頭皮のターンオーバーに効果的な食品
(出典:(14)必須アミノ酸特にリジンについて) (出典:(15)脂漏性皮膚炎による頭皮落屑に対する中医学的鍼治療の効果)頭皮のターンオーバーに効果的な栄養素は、主にL-リジン、ビタミンB2、ビタミンB6です。これらの栄養素が多く含まれる食品は次の通りです。
栄養素 | 多く含まれる食品 |
L-リジン | 肉類、魚介類、乳製品、大豆製品、豆類など |
ビタミンB2 | 豚レバー、海苔、アーモンド、チーズ、鶏卵など |
ビタミンB6 | 赤身肉、鶏肉、マグロ、バナナ、牛レバー、カツオなど |
頭皮の血行促進に効果的な食品
(出典:(16)舌痛症とカプサイシン感受性知覚神経との関係 ―循環動態と免疫組織化学的検討―) (出典:(17)新規脳保護療法:EPA)頭皮の血行促進に効果的な栄養素は、主にカプサイシンとEPAです。多く含まれる食品は次の通りです。
栄養素 | 多く含まれる食品 |
カプサイシン | 唐辛子、しし唐、キムチなど |
EPA | イワシ、マグロ、サバ、マダイ、ブリ、サンマなど |
良質な睡眠をとる
(出典:(18)清酒酵母による睡眠の質改善作用と機能性表示食品への応用)良質な睡眠をとることは、頭皮の健康を保つために必要な生活習慣のひとつです。
頭皮や髪の毛の健康にとって重要な役割を果たす成長ホルモンは、睡眠中のとくに深い眠りについたときに多く分泌されます。
睡眠不足の状態では成長ホルモンの分泌が減少し、頭皮や髪の毛の生成に必要なタンパク質の合成が十分に行われなくなります。
生活リズムを見直し、規則正しい生活の中で十分な睡眠がとれるように意識しましょう。
頭皮マッサージをして血行を促す
(出典:(19)地肌マッサージの頭皮への作用)頭皮環境へのアプローチには頭皮マッサージも有効だとされています。以下の方法を毎日3分ほど実践してみましょう。
1.頭皮全体を指でつかみ、3回丸く動かす。その後3秒かけて指圧を行う。場所を変えながら6~8回行う。
2.もみあげのあたりから生え際に沿うように、中指と人差し指で頭皮を押しながら引き上げる。
3.おでこの生え際から指で円を描きながら、頭頂部まで移動する。最後に頭頂部を3秒間強めに押し、ゆっくりと力を抜く。
4.こめかみから上に向かって、指で頭皮を押しながら引き上げる。
5.頭全体を指先でリズムよく叩く。
6.後頭部のくぼみに中指と人差し指を固定し、あごをゆっくりと上下させる。3回くり返したら、最後に深呼吸をする。
皮膚科・クリニックを受診する
(出典:(20)マラセチア関連疾患)皮膚科やクリニックを受診することも、頭皮の乾燥対策のひとつです。
頭皮の乾燥やフケなどは、細菌などが原因で起こる皮膚疾患の症状である可能性もあります。ここまで紹介したアプローチで改善が見られない場合は、頭皮の状態をもう一度よく観察し、皮膚科やクリニックへの受診も検討しましょう。
頭皮の乾燥を防ぐ保湿ケア用品の選び方
頭皮の乾燥を防ぐためには、保湿ケアも欠かせません。ここからはおすすめの保湿ケア用品の選び方について解説します。
スキンケアローションの選び方
(出典:(21)化粧品の種類と使い方—スキンケア化粧品—)頭皮用スキンケアローションにはさっぱりとした使用感のものから、保湿効果の高いものまでさまざまなタイプがあります。
頭皮の乾燥が気になる場合は肌が敏感になっていることが多いため、低刺激タイプのものを選ぶのがおすすめです。
ただし低刺激タイプの製品であれば、どれを使ってもいいわけではありません。たとえばパラベンなどの表示指定成分が含まれていないことを基準に選ぶのも、ひとつの方法です。
メーカーによって配合されている成分はさまざまなので、肌との相性を考慮しつつ選びましょう。
ヘアブラシの選び方
(出典:(22)バリアケアに着目した敏感肌用化粧品の開発) (出典:(23)ヘアケアの科学)豚毛や猪毛などの天然毛からシリコン、ゴムなど、ヘアブラシにはさまざまな素材や硬さがあります。
乾燥している肌はすこやかな肌に比べて、バリア機能が低いことがわかっているので、頭皮が乾燥している場合は、肌への負担が少ないやさしいタッチのヘアブラシを使いましょう。ブラッシングによる髪の損傷が少ないとされるナイロンなどがおすすめです。
またヘアブラシを使う際には、あまり力を入れすぎずブラッシングするのがおすすめです。バリア機能が落ちてしまっている肌に刺激を与えないよう、やわらかい力をイメージしてブラッシングしましょう。
ヘアオイルの選び方
(出典:(24)頭髪用製品とその作用) (出典:(25)化粧品の種類と使い方—スキンケア化粧品—) (出典:(26)頭皮トラブルが毛髪物性に及ぼす影響と植物由来エキスによるその予防) (出典:(27)最近の化粧品用樹脂の動向)スキンケアローションと同様、ヘアオイルも低刺激の製品がおすすめです。
ヘアオイルは一般的には髪にツヤを与えたり、まとまりをよくしたりするために使用されます。近年では頭皮マッサージ用のオイルもあります。
またツバキ油やオリーブオイルなど天然由来のものから、環状シリコンや水添ポリイソブテン、高重合ジメチルポリシロキサンと天然油・エステル油を配合したものまで、成分もさまざまです。
それぞれの成分には特徴があり、たとえばツバキ花エキスやツバキ種子発酵エキスには、頭皮の炎症を抑える効果が認められています。
ヘアオイルを選ぶ際には成分をチェックし、肌との相性を考慮しましょう。
頭皮の乾燥を防いで頭皮環境を守ろう
頭皮の乾燥はもともとの肌質以外にも、冷暖房の影響や食生活の乱れ、不適切なヘアケアなどさまざまな原因があります。
また放っておくとかゆみやフケだけではなく、抜け毛や薄毛にもつながる恐れがあります。
適切なヘアケアや正しい生活習慣を取り入れて、乾燥に負けない健康な頭皮環境を守っていきましょう。
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- 2).愛知県立大学看護学部紀要vol.21 (2015) p.21-29
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- 8).23).講座(シリーズ) “変わる”生活と消費科学 9
- 9).順天堂医学 37巻 (1992) 4号 p.572-586
- 10).日本油化学会誌 18巻 (1969) 7号 p.364-373
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